Chapter 1 of 1

Chapter 1

遠友夜学校校歌

有島武郎

沢なすこの世の楽しみの

楽しき極みは何なるぞ

北斗を支ふる富を得て

黄金を数へん其時か

オー 否 否 否

楽しき極みはなほあらん。

剣はきらめき弾はとび

かばねは山なし血は流る

戦のちまたのいさほしを

我身にあつめし其時か

オー 否 否 否

楽しき極みはなほあらん。

黄金をちりばめ玉をしく

高どのうてなはまばゆきに

のぼりて貴き位やま

世にうらやまれん其時か

オー 否 否 否

楽しき極みはなほあらん。

楽しき極みはくれはどり

あやめもたへなる衣手か

やしほ味よきうま酒か

柱ふとしき家くらか

オー 否 否 否

楽しき極みはなほあらん。

正義と善とに身をさゝげ

欲をば捨てて一すぢに

行くべき路を勇ましく

真心のまゝに進みなば

アー 是れ 是れ 是れ

是れこそ楽しき極みなれ。

日毎の業にいそしみて

心にさそふる雲もなく

昔の聖 今の大人

友とぞなしていそしまば

アー 是れ 是れ 是れ

是れこそ楽しき極みなれ。

楽しからずや天の原

そら照る星のさやけさに

月の光の貴さに

心をさらすその時の

アー 是れ 是れ 是れ

是れこそ楽しき極みなれ。

そしらばそしれつゞれせし

衣をきるともゆがみせし

家にすむとも心根の

天にも地にも恥ぢざれば

アー 是れ 是れ 是れ

是れこそ楽しき極みなれ。

衣もやがて破るべし

ゑひぬる程もつかの間よ

朽ちせでやまじ家倉も

唯我心かはらめや

アー 是れ 是れ 是れ

是れこそ楽しき極みなれ。

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