Chapter 5 of 5
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話に夢中になっているうちに、乗客は一人残らず下車してしまい、がらんとした車室には先生と私とだけが相対しているのだった。
「その若い男の六部というのは――?」
「新生寺さんの前身でしょう」
「では――、伯父が――、その女を殺したと仰しゃるんですか?」
「それは分りません」
「でも、――まさか、――あの伯父が殺人罪まで犯して、平気で坊さんなんかなっているとは思われないけれど――、して、その百足はどうして臨終の時に、出て来たものでしょう?」
「山の中ですもの、座敷の中に百足が入って来る位の事は珍らしくはありませんよ。殊に雨の前なんかには壁にはりついたようになっていることなんか、しじゅうありますよ」
「じゃ、全く偶然ですわね」
「そうです。――しかし、新生寺さんはどういう訳か百足を大変嫌っていましたよ」
「誰だって、先生、あんなもの好きな人はありませんよ。――ですがどうして、死際にそんな変な様子をしたんでしょう? 女の真似なんかして、――笑いながら死んで行くなんて――。やはり発狂したんでしょうねえ?」
「さあ。そこですよ。私達が興味を有って研究しているのは――」
「興味を有ってですって?」
「そうです。誰がその女を殺したのか分らないとしても、新生寺さんが女の霊に殺されたという事だけは確実でしょう!」
先生は謎のような微笑を唇に漂わせて、それきり黙ってしまった。
やっぱり私には解らない、わからないが何となく不気味な気持がして、どこからか幻の嗤いが聞えて来はしないかと、思わず周囲を見廻した。
●図書カード