Chapter 1 of 7

釣りの道具を、しらべようとして、信一は、物置小舎の中へ入って、あちらこちら、かきまわしているうちに、あきかんの中に、紙につつんだものが、入っているのを見つけ出しました。

「なんだろうか。」

頭を、かしげながら、ほこりに、よごれた紙を、あけてみると、べいごまが、六つばかり入っていました。信一は、急になつかしいものを、見いだしたようにしばらくそれに見入っていました。そのはずです。一昨年の春あたりまで、べいごまが、はやって、これを持って原っぱへ、いったものです。それが、べいのやりとりをするのは、よくないというので、お父さんからも、先生からも、とめられて、ついみんなが、やめてしまったが、ただ記念にしようと思って、これだけすてずに、紙に包んで、しまっておいたことを、思い出しました。

「やはり、こまはおもしろいなあ。」

お天気はいいし、子供たちのあそんでいる声が、きこえるし、もう信一は、じっとして、家にいることが、できなかったのです。べいごまを、ふところへ入れると、赤土の原っぱをさして、出かけていきました。

原っぱには、武ちゃんや、善ちゃんや、勇ちゃんたちが、あそんでいました。

信一は、ふところから、べいを取り出して、土の上で、まわしてみました。これを見つけると、善吉が、遠くからかけてきました。

「信ちゃん、なにしてんだい。」と、さけびました。

「なんでもない、ただ、まわしてみたんだよ。」と信一は、べいをひろい上げて、また紙の中へ、入れました。

「君、べいごま?」

「うん、そうだよ。」

「いくつ、持っているの?」

「六つしかない。」

善吉は、あんなに、たくさん持っていたのに、どこへやったのかと、いわぬばかりの顔つきをして、信一を見ました。

「あんなにあったのを、どうしたんだい。」

「みんな川へすててしまった。」

「おしいことをしたね。」

「だって、お父さんが、すてろといったから。」

善吉は、自分も同じようなめに、あったことを、思い出していました。

「君は?」と、こんどは、信一がたずねました。

「ぼくは、いま十個持っているよ。あとは、ごみ箱へ、すててしまったのさ。」

善吉が、こう答えると、信一は、目をまるくして、

「いまなら、くず屋さんにやると、いいんだね。ごみ箱の中へ、すてたりして、おしいなあ。」と、いいました。

「ぼくも、十個かくしておいたのを、持ってこようか。」と、善吉は、いいました。

「あ、持っておいでよ。」

このとき、あちらから、勇二と武夫が、

「なにしているの。」と、口々に、わめきながら、やはり、かけてきました。

「べいごま。」

「ぼくも持っているよ。」

「いくつ?」

「ぼくは、十五個ばかり。」と、武夫が、いいました。

「おお、たくさんあるんだな。」と、みんなが、感心しました。

「勇ちゃんは、持っていないの。」

「僕は、十個ばかり。」と、勇二が答えました。

「なんだ、みんな、持っているんだな。じゃ、ここへ持ってきて、まわしっこしない?」と、善吉がいいました。

「しようよ。ただやるだけなら、いいんだろう。やったり、とったりして、かけなけりゃね。」と、勇二が、いいました。

「ほんとうは、それでは、おもしろくないんだがな。」と、武夫がいいました。

「だめ、見つかったら、しかられるから。」

「さあ、早くみんな、家へいって、持っておいでよ。」と、信一が、いいました。

「オーライ。」と、子供たちは、元気よく、いっさんに、原っぱから、かけ出して、きえてしまいました。

まっさきかけて、つっこめば

なんともろいぞ、敵の陣

馬よいななけ、かちどきだ

信一は、うたいながら、しきりに、べいをまわして、しばらく、しなかった、手ならしをしていました。

すると、このとき、ぴかりと、自分の顔を、あかるくてらしたものがあります。とんぼでも飛んできて、さわったのでないかと、顔をなでてみました。そして、べいのまわるのを見ていると、また、ぴかりとしました。

「なんだろう?」

信一は、頭が上げて、原っぱを見まわしました。はじめ、だれもいないと、思ったのに、あちらに、材木のつんである上で、女の子が、あそんでいました。

よく見ると、かね子さんと、光子ちゃんらしいのです。そして、ぴかりとしたのは、だれか、コンパクトに、ついているかがみで、日をてりかえして、自分に、いたずらを、したのです。

信一が、じっと見ていると、二人は、くすくす、笑っていました。

「知っているよ。」と、信一が、その方へ走っていきました。

「私たち、なんにもしないわ、おままごとしていたのよ。」と、かね子さんがいいました。

「コンパクトのかがみで、やったんだい。」

「ほほほ。」

「信ちゃん、そこにいるの。」と、まっ先にかけてきたのは、善吉でありました。つづいて、武夫に、勇二が、手にこまをにぎってかけてきました。

「ああ、ござが、ないなあ。」

「だれか、だいと、ござを、持ってくると、いいんだね。」

「だいは、いらないけれど、ござがなくては、できないよ。」

こまは土の上では、よくまわらぬからです。勇二は、足に力をいれて、赤土の上をトン、トン、と、ふんでいました。かたくして、そこで、こまをまわそうというのです。

「土の上では、だめだよ、だれか、家にござを持っていない。」と、信一が、いいました。そこへ、また、あちらから一人の少年がかけてきました。

「小山が、きた。」

小山は、かね子さんの兄さんです。

「べいをするのかい。」と、小山が、ききました。

「ござがなくて、こまって、いるんだよ。だれか、ござを、さがしてこないかな。」と、勇二が、いいました。

「私、家へいって、持ってきてあげるわ。」と、かね子さんが、いいました。

「ばか、家にござなんか、ないじゃないか。」と、小山は、かね子さんをにらみました。

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