Chapter 1 of 1

Chapter 1

ねえやの田舎は、山奥のさびしい村です。町がなかなか遠いので、子供たちは本屋へいって雑誌を見るということも、めったにありません。三郎さんは、自分の見た雑誌をねえやの弟さんに、送ってやりました。

「坊ちゃん、ありがとうございます。弟は、どんなに喜ぶかしれません。」と、ねえやは、目をうるませて、いいました。

すると、ある日のこと、弟の孝二くんから、たいそうよろこんで、手紙がまいりました。そして、山で拾った、くりや、どんぐりを送ると書いてありました。

「町が遠いのに、弟さんは、小包を出しにいったんだね。」と、三郎さんはききました。

「いえ、町へは、毎日、村から、だれかついでがありますから。」と、ねえやは、答えました。

手紙のあとから、小包がとどきました。あけると、紫色のくりや、まるいどんぐりや、また、ぎんなんなどが、はいっていました。そして山から、いっしょについてきた、木の葉もまじっていました。これを見ると、ねえやは、子供の時分のことを思い出して、なつかしそうにながめていました。

「こんなのが、山にたくさんなっているの?」

「はい、たくさん、なっています。」

「いってみたいなあ。」と、三郎さんは、田舎の秋の景色を思いました。

三郎さんは、さっそく、孝二くんに、礼をいってやりました。それから、そのうちに、また雑誌を送るからと書きました。

しばらくたつと、孝二くんから手紙がきたのであります。

「なんといって、きたんだろうな。」

三郎さんは、あけてよんでみると、

「送っていただいた、美しい雑誌を友だちに見せると、みんなが、奪い合って、たちまち、汚くしてしまいました。残念でなりません。また、送っていただいて、破るといけないから、どうか、もう送らないでください。」と、書いてありました。

「そんなに、あんな雑誌がめずらしいのかなあ。」

三郎さんは、活動もなければ、りっぱな店もない、電車もなければ、自動車も通らない、にぎやかなものは、なに一つもない、田舎の景色を目にえがいて、そこに遊ぶ子供の姿を想像した。そのかわり、林が茂っていれば、美しい小川も流れています。

「僕たちだって、そのかわり、くりや、どんぐりを、拾うことができないのだから、おんなじこった。」と、三郎さんは思いました。

三郎さんが、孝二くんの送ってくれた、どんぐりを、学校へ持ってゆくと、さあたいへんでした。みんなは、珍しがって、

「見せておくれ。」と、そばへ寄ってきました。

「君、このおかめどんぐりを、どこから拾ってきたんだい。」

「一個、おくれよ。」

「僕にもね。」

みんなは、三郎さんのまわりにたかって、はなれないのでした。そのうち、奪い合いから、けんかをはじめたのであります。

その晩、三郎さんは、考えました。

「田舎の子は、雑誌を見たいのだ。僕たち街の子は、おかめどんぐりがほしいのだ。かえっこすればいいじゃないか。」

あくる日、三郎さんは、学校へいって、

「君たちのよんだ雑誌を田舎の子供へ、送ってやって、田舎の子供たちから、おかめどんぐりを送ってもらおうよ。」と、相談しました。

「賛成、賛成!」

そのことを、三郎さんから、孝二くんにいってやると、すぐに返事がきて、田舎の子供たちも大喜びだというのでした。そして、雑誌やおかめどんぐりよりも、まだ知らない、遠い田舎と、街とで、おたがいに、交際するのが、とてもうれしかったのであります。

●図書カード

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