Chapter 6 of 19
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可哀さうに旦那も歌ひましたよ、
クロチキンの詩ダルゴミジスキーの曲
劇詩「老いたる伍長」を旦那は感慨ぶかさうに歌つた、
旦那のいつもの癖、ピアノの蓋を手でさすつたり、
撫でたり、指で拍子をとつたりして
大きな胴体の中の風の袋を
全く良い音にしぼりあげて出した。
足を揃へ、オイ銃を下すな
俺はパイプをもつてゐる
最後の別れだ、
送つてくれ
俺は君等の親父だよ、
頭も此の通り白髪だよ、
これが軍隊の生活だ、
足を揃へて―オイチ、ニ、
気をつけ、右へならへ
オイチ、ニ、オイチ、ニ、
(劇詩「老いたる伍長」の歌詞から)破れるやうな拍手の中に
老いたる伍長シャリアピン
「芸術のために」オイチ、ニ、オイチ、ニ、
と労働者の聴衆ではなく
所謂上流の席上の歌ひ手として、
オイチニ、オイチニ、と歌うたふ、
「ロシアに偉大なる芸術あり」
といふ宣伝旅行の役割を
旦那が果してゐるだらうか、残念ながら、
「ロシアに頑固なる芸術家あり」
といふことを吹聴してあるくやうなものだ