Chapter 3 of 10
(三)威大なる自信力
▲この戦争の結果は、俄然として日本人に偉大なる自信力を生ぜしめたり、己惚にあらざる真個の自信力は、個人に活気を与へ、又た国家に活気を与ふ。自信力の発動は奮励となり、健闘となり、発展となる。加ふるに当時遼東半島還附の遺恨問題あり、心ある国民は臥薪甞胆の意気燃ゆるが如く、何時かは世界第一等国民となつて、彼等を見返し呉れんと奮励努力せしが故に、十年の歳月甚だ長からずと雖も、其間に日本の国力は驚くべき発展を為せしなり。欧米国民は夫れを知るや知らずや、中にも露国は傲慢無礼、日本を蔑視し、東洋に暴威を揮はんとせしより、日本国民の血は沸けり、骨は鳴れり。当時の日本政府は軟骨なりしも、日本国民は軟骨にあらず、五千万国民悲壮の叫声は、遂に彼の日露大戦を起すに至りし也。
▲日本は古来武勇の国と雖も、地図の表面に現はれたる日本は、極東の一島帝国のみ、露国は欧洲否世界の第一大国、面積に於ても我に数十倍す。而して彼は世界の優等人種なりと自称する白色人種なり。我は彼等が目して、劣等人種なりと呼ぶ黄色人種なり。兵力に於ても、富力に於ても、智力に於ても、当時の欧米人士中、誰か日本の大勝を予期せしものあらんや、若し有りとせば、之れ達観の士なり。恐らく日本全国民と雖も、心の底の底には、此戦、死すとも負けまじと覚悟せしに相違なけれど、一面に於ては、実に危く感ぜしは疑ふべからざる事実なり。