Chapter 1 of 1

Chapter 1

若夏の入江の西に、

萎ゆる帆を静かにたゝみ、

大船の錨なぐるや、

波止場には、吾かなつかしき

南国の男女のあまた、

すゝみよる、艀むかへぬ。

艀より人力車にうつり、

石原を、左右にゆれて、

店先の軒をたどれば、

かけつるす芭蕉実のかをり

夏風にゆる/\薫じて、

故郷は夢にさながら。

父母や妹をしのび、

過ぎゆけば、榕樹しげれる、

門に着き――涙こぼれぬ。

●図書カード

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