Chapter 1 of 1
Chapter 1
なつかしい丘の上、
棕呂の若葉のそよぎに、小鳥の唄。
傾むきつくす夕月も、
見る/\最後の接吻を残して、
深い々々、海のかなたへ
去らうとする、
なつかしい丘の上に、Kの君を持つ心よ!
夢を語るやうな春の風に
顫へる。
葉ずれの音に眼が狂へば、
西へ東に、足が動きだす………………
夫れと思ふ俤が、更に眼にとまらぬ。
胸を抱いて、若かい悲しみに沈む。
林の間に、夜の色が浮び出した。――
黒ろい怖ろしい影は
私の魂を厭し始める。
もう是れが私のKの君に対する最後だ!
●図書カード