Chapter 1 of 4
一
劇団文学座に籍はおいてゐるが、新劇女優の卵にすぎない次女今日子のことをなにか書けといふ註文である。
私は元来自分自身について語る趣味をまったくもたないから、たとへどのやうな立場にせよ、娘について語ることも、あまり気が進まない。
しかし、考へてみると、本誌の編集者がとくに私にさういふ文章を書かせようとする意図もわからなくはない。
また、私が今日まで周囲のだれかれから受けた質問の内容とほぼ一致してゐるところをみると、世間の好奇心もまた格別のやうに思はれるので、この際むしろ、進んで、私は、自分の娘を俳優にする決心をした心境を率直に語らうと思ふ。