一 極刑列車
昨夜見た夢がとても異様で鮮やかだったため、それをどうしてもあなたに伝えたくなりました。思い出す度にぶり返してくる印象から自分の心を解放したいというだけではなく、夢の意味を見出してもらえるように。今でも尚、自分でそれを見つけようとすると、余りに恐ろしすぎ身震いしてしまってできません。
どうやらあなたと私は男女からなる大群衆の中にいるようでした。私自身を除いて――私は自分の意思でそこにいたからですが――全ての人々の上に死の判決が広がっていました。新たに君臨した恐怖の王の役人がいかなる凶運を宣言したかを――どうやってか判りませんが――私は知っていました。私はまたよく知っていたのですが、群衆の誰一人として本当に死刑に値する罪を犯した者はおらず、何か政治や社会や宗教についての体制と繋がりがあることを口実に完全な破滅を運命づけられたのです。皆、もうじき大規模なスケールで死刑が執行されることを知るようになり、だが刑場も処刑法も何一つ知らされないままでした。ここまでの所、夢の中には次に飛び出してきた恐怖のシーンを暗示するものは現れなかったのです――視覚、聴覚、触覚の全感覚を最大限に緊張させるシーンで、そんな夢はこれまでに見たことがありませんでした。
星の見えない暗い夜でした。私は、凶運に見舞われた全ての男女、どこでどう殺されるか知らぬままもうじき自分たちが死ぬことになると承知している男女と共に、どこか未知の目的地へと漆黒の闇を疾走する列車の中にいました。私は列車の後端にかなり近い車両の片隅に座り、開いた窓から身を乗り出して闇の中を凝視していました。その時突然声がしたのです。空から私に向かって話しかけたような低く明瞭で激しい声音は、今でも思い出すだけでぞっとします――「処刑は今まさになされんとす。お前の全ては失われるのだ。列車の前には恐るべき崖が悍ましい高さに切り立ち、底は測鉛の届かぬ海底よりも深い。線路の先には他にない。列車はその深淵に向け飛び込み消滅する。機関車には誰も乗っておらぬ!」
これを聞いて私は恐怖に飛び上がり、同じ客車に乗っている客の顔を見回しました。先の怖るべき言葉を発した者も、それを耳にした人もいませんでした。客車のドームのランプがちらちらと周りの客を照らしていました。一人一人顔を見ましたが、警告があった様子など影も形もなかったのです。そこに再び虚空から声がしました――「助かる道はただ一つ。列車から飛び降りよ!」
私は一目散に客車のドアを押し開け、ステップに足を掛けました。列車は猛進し、速度が上がるにつれ激しく前後に揺れ、巻き起す強風が私の髪を顔に散らし服の上で切り裂きました。
この瞬間まで私はあなたのことを考えていませんでした。あなたが同乗していることにも気づいていなかったようです。客車のドアの脇の枠を固く握りながら、じりじりと機関車に向けて進んでいきました。どこかで線路の上に安全に飛び降りられる場所を見つけられないかと望みつつ。こうやって客車から客車へと渡りながら、それぞれの客車のランプに照らされた顔を見たのですが、乗客の中に迫り来る運命のことを考えている人はいませんでした。あるコンパートメントを覗いた時、ついにあなたに会えたのです。「出て!」私は叫びました「出て! 逃げるの! もうすぐ私たちは粉々よ!」
あなたは即座に立ち上がるとドアをこじ開け、外のステップの上で私の横に立ちました。速力の出ていることといったら、これまでにない恐怖を覚える程でした。列車は暴走しながら前後左右に揺れました。風は叫び声を立てて流れていきました。「飛び降りて!」あなたに向かって叫びました「逃げなきゃ! ここにいたら間違いなく死ぬわ。この先には深淵があって、機関車には誰もいないんだから!」
こう言うとあなたは振り向き、とても深刻な目で私を見て言いました。「いえ、飛び降りない。二人で列車を止める。」
この言葉を残してあなたは私から離れ、ステップに沿ってじりじりと列車の前の方に進んでいきました。まったくこんなドン・キホーテみたいな真似をして、と腹立ち半分心配半分で私も後を追いました。客車の一両には母と一番上の兄がいましたが、他の人と同様に何も気づいていませんでした。やがて先頭の客車にたどり着いた私たちは、機関車の釜が発する恐ろしい光の中でかの声は正しく、機関車には乗務員がいないことを見てとったのです。
あなたは進み続けました。私は「無理! 無理!」と叫びました。「できないわ! お願いだから戻ってきて。」
そこであなたはステップに膝を落とし、言いました――「確かに。このやり方じゃ無理。でも列車を救うことはできる。連結器を切り離すから手伝って。」
機関車と客車は大きな鉄のフック二つと止め釘で連結されていました。必死になって、私などほとんど落ちそうになりながら、フックを外し客車を機関車から切り離したのです。すると機関車は気のふれた超自然の怪物のように一人ですっ飛んでいき、背後に巨大な火花の帯を曳きながら闇の中に消えました。私たち二人はステップの上に立ったまま、ゆるやかに速力が落ちていくのを言葉もなく見ていました。ついに列車が停止すると、乗客たちに「助かったんです! 助かったんです!」と大声で話しかけました。ドアが開いてどやどやと乗客が降り、しきりに話を交わそうとする、そんな混乱の中で私の夢は覚め、しかしその恐怖に打ちのめされ動悸が止まらなかったのです。
――ロンドンにて、一八七六年十一月。