小寺菊子
小寺菊子 · Japanese
No translation yet. Request one to move it up the queue.
小寺菊子 · Japanese
First paragraph preview
Original (Japanese)
「あれ誰だか、兄さんは知つとるの!」 「知らん!」 「ちよつとそこ覗いて来ると分るわ。」 小学校から帰つて来た兄と妹である。部屋一つ隔てた奥の座敷を、兄の孝一は気味わるさうにそつと覗きに行つた。 「分つた?」 賢こい眼を輝かせて、みよ子は微笑した。 「うゝん。」 孝一は頭を振つた。 「をかしな兄さん、恍けとるのね、」 「………………」 可愛い下り眼の兄の表情がくもつて、返事をしない。 「あんまりびつくりして、眼が廻つたの! 顔色がわるいわ。」 妹の自分にさへ分つてをるのに、兄に分らぬ筈があらうか……とみよ子はなほも微笑をつゞけてゐる。この四五日のざわ/\とした家の様子で、兄妹とも窃に「父の帰宅」を感づいてゐたのだが、然し、誰も子供たちにそれを話してくれなかつたのである。 「あれ、私たちのお父さんぢやないの、変な兄さんね、もう一遍見てくるといゝわ。」 臆病さうな兄を見上げて、みよ子は自分の嬉しさを一杯に現はしてゐる。 「あれがお父さん? そうかなあ。」 孝一はだん/\と青ざめて来た。 「さうよ、兄さんちつとも覚えてゐないの? 私は少しおぼえてるわ。だけれど、あんまりおぢいさんになつてちよ
小寺菊子
Translation status
WaitingLog in to request a translation.
Other books by this author
Frequently asked questions
Yes — completely free. This book is in the public domain, so Pagera offers the full text without payment or account requirement. Pagera is funded by advertising.
Free to read
Start reading immediately — no signup required. Create a free account for more books and features.