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犬の生活
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犬の生活
小山清
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Translation Pagera AI
Original Public Domain
Chapter 4 of 4

4

「なんだか、孫でも産まれるような気持がします。」

とお婆さんは云った。

私はメリーの産室には、離れの土間をあてることにした。私はまた果物屋から林檎箱をわけてもらって、それで産床をこしらえた。

離れの前の柿の実があらかた色づいた頃、メリーは無事に仔どもを産んだ。仔どもは五匹で、牡が二匹で、牝が三匹であった。被毛はみんなメリーに似ていた。

メリーの表情には、はじめて母親になった喜びが輝いていた。お婆さんもほっとしたし、私もほっとした。

その後、仔どもはみんな順調に発育している。仔どもがそろって互いにもぐりっこをしながら、メリーの乳房にとりついているところは、なんとも云えず可愛い。掌のうえに載せてやると、険難がって鼻をくんくんいわせる。その様子はまるで人間の子供が、「もういい。もういい。」と云っているように見える。

メリーは仔どもに乳を与えながら、誇らしげに私の顔を見上げる。その眼は私に向い、「ね、みんないい仔でしょ。」と自慢しているように見える。

こないだ、お婆さんの孫達が遊びにきたが、そのとき持参のカメラで、私がメリー達と共にいるところを写真にとってくれた。送ってくれた写真を見ると、メリー達のそばに、まぬけづらをした人間が写っていて、それはどうやら私のようであった。それこそ客観的判断の見本かも知れなかった。けれどもその写真を見て、私はチャップリンの「犬の生活」という古い映画のことを思い出した。その映画が上映されたのは、私がごく幼い頃のことで、私はその映画を見たようにも思うけれど、あるいは見なかったのかも知れないのだ。私はその映画がどういう筋書のものであったかも覚えていないし、またどんな場面があったかも覚えていないのである。けれども、私はその映画の一枚のスチールを見ていて、それを記憶しているのだ。それはれいの浮浪者の扮装をしているチャップリンが一匹の野良犬とならんでいる写真なのだ。その後も私はずっとその写真のことを、なんとなく忘れずにいる。筋書も覚えていない、あるいは見なかったのかも知れない映画の一枚のスチールを。「犬の生活」というその題名と共に。

●図書カード

Chapter 4 of 4
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