Chapter 1 of 11
一
ある朝、兜町のさる仲買店の店先へドサリと投げこまれた郵便物の山の中で、ひときは毛色の変つた一通があつた。たいへん分厚だ。けれども証券類や印刷物とは関係のない様子に見える。
ペン字のくせに一字一画ゆるがせにしない筆法極めて正確な楷書で、なにがし商店御中とある。で裏を返してみると、これまた奇妙である。
なにがし区なにがし町――といつても、つい先年まではさしづめ武蔵野などと言つてゐたあたりの、なにがし精神病院内、なんのなにがしと書いてある。
はて面妖なところから便りがとどいたものである。精神病院のお医者さんやら小使でも株をやらない筈はないが、爆撃機のお腹の中の爆弾ほどまる/\ふとつて重たいのが気にかかる。そこで勇士がひらいてみると、ザッと次のやうな大意のことが書いてあつた。