碧玉
柿もぐや殊にもろ手の山落暉
摺り溜る籾掻くことや子供の手
新藁や永劫太き納屋の梁
蓑虫の鳥啄ばまぬいのちかな
鳴子温泉夜長さを衝きあたり消えし婢かな
川蟹のしろきむくろや秋磧
泥濘におどろが影やきりぎりす
日光遊草山が門や照れば遠退く秋の嶺呂
ふるさとを去ぬ日来向ふ芙蓉かな
浸りゐて水馴れぬ葛やけさの秋
ひやゝかや黍も爆ぜゐる夕まうけ
郷を出づることのさしせまるにそのまうけごとのくさ/″\もおい母にまかせきりなりければ、ある夜秋の夜のつゞるほころび且つほぐれ
二十五日仙台につく みちはるかなる伊予の我が家をおもへばあなたなる夜雨の葛のあなたかな
ひねもすの山垣曇り稲の花
稲原の吹きしらけゐる墓参かな
籾磨や遠くなりゆく小夜嵐
秋ゆくと照りこぞりけり裏の山
薪積みしあとのひそ音や秋日和
蔦温泉附近牧場秋晴やあえかの葛を馬の標
蔦温泉あちこちの祠まつりや露の秋
わかものゝ妻問ひ更けぬ露の村
鮎落ちて水もめぐらぬ巌かな
うちまもる母のまろ寝や法師蝉
蜻蛉やいま起つ賤も夕日中
生保内といへるみちのくの山村にやどかればはからずもゼススををろがむ旧家なりはゞかりてすがる十字架や夜半の秋
夕ざれば戸々の竈火や啄木鳥
ゆく秋を乙女さびせり坊が妻
鴉はや唖々とゐるなり菌狩
落栗やなにかと言へばすぐ木魂
ふるさとの幾山垣やけさの秋
石塊ののりし鳥居や法師蝉
窓の外にゐる山彦や夜学校
沈む日のたまゆら青し落穂狩
泳ぎ女の葛隠るまで羞ぢらひぬ
鵙来鳴く榛にそこはか雕りにけり
みじろぎにきしむ木椅子や秋日和
つゆじもに冷えてはぬるむ通草かな
枯れつゝも草穂みのりぬ蝶の秋
桑原に登校舟つく出水かな
つゆじもに冷えし通草も山路かな
学生の一泊行や露の秋
古町の路くさ/″\や秋の暮
栗山の空谷ふかきところかな
溝川に古花ながす墓参かな*
岨に向く片町古りぬ菊の秋
風ふけば蠅とだゆなり菊の宿
落鮎や空山崩えてよどみたり
秋の夜の影絵をうつす褥かな
墓の門に塵取かゝる盆会かな
よべの雨閾ぬらしぬ霊祭
溝川に花篩ひけり墓詣
銀杏にちり/″\の空暮れにけり
秋の日をとづる碧玉数しらず
病室にてかの窓のかの夜長星ひかりいづ
夜長星窓うつりしてきらびやか
蜻蛉や秀嶺の雲は常なけれ
野分してしづかにも熱いでにけり