Chapter 1 of 13

Chapter 1

思わず彼は拾い上げた桜の実を嗅いで見て、お伽話の情調を味った。

それを若い日の幸福のしるしという風に想像して見た。

これは自分の著作の中で、年若き読者に勧めて見たいと思うものの一つだ。私は浅草新片町にあった家の方でこれを起稿し、巴里ポオル・ロワイアル並木街の客舎へも持って行って書き、仏国中部リモオジュの客舎でも書き、その後帰国してこの稿を完成した。この書は私に取って長い旅の記念だ。

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