Chapter 1 of 1

Chapter 1

神無月、日は淡々と

夕ぐれの雲ににほへば、

眼路ひくき彼方に薄れ

あはれなる遠樹ぞ見ゆる。

畦をゆく斑の牛と

黄牛は声も慵く、

今は皆刑の場に

皮剥がれ紅く伏しなむ、

かく思ひ定めし如く

とぼとぼと霧にまぎれぬ。

素枯野のあなた、沼尻の、

荻すすき折れ伏す所、

ああ如何に髑髏を洗ふ

冬の水音して落ちむ。

ひえひえと身に泌む寒さ、

われは今いづこ歩むや、

ふと思ふ、ああ人の世も

ここにして終極にかあらむ。

下り坂をぐらくなりて

見るかぎり煙うづまく。

●図書カード

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