Chapter 1 of 1

Chapter 1

真夏の午の片日向、

苔すこし泥ばみ青む捨石に、

鳩酢草は呼吸細う雫に湿ひ

実を持ちぬ、かつ喘息ぎつゝ。

そのかみ誰れに小さなる

性は得て、また誰恋ひて、その熟実、

かつこぼし、かつ夜を待ちて、

いづ方へ精進の魂ぞ。

鳩酢草はえも知らず、

捨石に。――小雨のあとの風いきれ、

木々みな死ぬと泣く庭に、ひとり静に

おほどかに夢に入るさま。

蚊帳を繞れる名香に、

手枕も頬もひた痩せて病める身の

予は横臥しぬ。心こそ、鳩酢草の

魂にさながら似たれ。

風また薫り小雨しぬ。

鳩酢草も、予も一日

天地に幸福ありき。

●図書カード

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