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不思議な鳥
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不思議な鳥
田山花袋
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Translation Pagera AI
Original Public Domain
Chapter 8 of 16

花火線香のやうに

世の中のために破壊されないやうなものでなければ、折角、恋をしたつて、恋をした効がないといふものだ。ところが、世間では、リアリスチツクな世間では、さうでない。唯、恋だけすれば好いと思つてゐる。浮気であつても、軽薄であつても構はないと思つてゐる。だから、何うしても深いところに達しない。花火線香のやうにチラと燃えてそして瞬く間に消えて行つて了ふ。これでは駄目だ。

『けれど、いくら真剣にならうとしても、相手が浮気では、真剣になれやう筈がないぢやありませんか』

『そんなことはない』

『何うしてです?』

『真剣になるといふことは、相手の模様を見て、それからなるといふやうなものではないですからな』

『ぢや、相手はどんな不真面目でも、此方でさへ真剣になれば好いと言ふんですか?』

『それはさうとも……』

『ぢや、馬鹿を見ても為方がないんですね?』

『ところが、不思議だ。さういふ風に、真剣になれば決して馬鹿を見ないから。向うから、本当になつて出て来るから……。そこだて。そこに自他の細かい心理があるんだよ。また仏教で言ふ因果律のやうなものの基礎的心理があるんだよ』

『どうも、しかし、そこは容易に信ぜられませんね。何うも危なつかしいやうな気がしますな』

『つまりリアリスチツクな頭だからだ。リアルにばかり執してゐるからだ。智の鏡を磨いて見ないからだ。空といふことを研究しないからだ。==先づわれから愛せよ==この語の意味は、誰でも知つてゐるだらうけれども、これを本当に経験するといふことは難かしいことだからね』

『さうですかな』

Chapter 8 of 16
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