Chapter 1 of 3

動物は敷居の上で訝しげに立ち止まると、いざという時はいつでも逃げ出せるように警戒していた。セヴァーンはパレットを置き、手を差し伸べてそれを招いた。牝猫は不動のまま、黄色の両目をセヴァーンの上に向けていた。

「ニャンコ、」と彼は低く心地よい声で呼びかけた。「おはいり。」

細い尻尾が心を決めかねるように震えた。

「おいでよ。」と再び彼。

猫は明らかにその声にほっとした様子で、手足をゆっくり畳み、両目で彼を捉えたまま、痩せこけたお腹の周りに尻尾を丸めた。

にっこりして彼はイーゼルから起き上がった。猫は声もなく彼に目を向け、歩み寄り自分の上にかがみ込む姿を見ても身じろぎせず、彼の手が頭を撫でるのを目で追っていた。猫はくたびれた声でニャオと鳴いた。

動物と話をするのが、ずっと前からのセヴァーンの習慣だった。多分、ひとりぼっちで暮らしていたからだろう。さて、彼はこう言った「どうしたんだい? ニャンコ。」

猫はおずおずとした目で彼の目を探った。

「わかってるって、」彼は優しく言った「丸ごと平らげちゃっていいんだよ。」

彼は粛々と動き、主人たる義務を果たそうとした。皿を洗うと、そこに窓框の瓶から残ったミルクをなみなみと注ぎ、跪くと小さなパンをちぎって手の平に載せた。

動物は立ち上がって皿の方ににじり寄った。

彼はパレットナイフの柄を使ってミルクとパンの小切れをかき混ぜると、猫がその中に鼻を入れられるように身を引いた。彼は無言で猫を見つめた。縁についた食べ物を猫が少しずつかじる度に、皿はタイルの床の上でカラカラと音を立て、とうとうパンはなくなってしまった。猫は紫色の舌を出して、ミルクの最後の一滴が消えるまで、皿が隅々まで磨かれた大理石のようになるまで舐め回した。猫は腰を下ろして、涼しい顔で彼に背を向け、毛繕いを始めた。

「その調子だよ、」セヴァーンは興味深げに言った「おめかししないとね。」

猫は片耳を傾けただけで、振り向くことも、手入れを休むこともなかった。徐々に毛が綺麗になってくると、セヴァーンは、それが元は白猫だったことに気づいた。病気なのか喧嘩のせいか、あちらこちらに点々と抜け毛があり、尻尾は骨張って、背中はごつごつしていた。だが、これでもかと毛を舐めまわした結果、生来の魅力がはっきりしてきて、彼は手入れが終わるまで口を出さずに待っていた。とうとう猫が両目を閉じ、香箱に座ると、とても優しく言葉を繋いだ:「ニャンコ、どんな目に遭ったのか教えてよ。」

その声に、猫はいきなりガラガラ声を出し始めた。ごろごろ言おうとしているのである。彼が屈んで頬をなでなですると、猫は再び甘えた小声でニャオと鳴いた。「うんうん、だいぶ良くなった。毛並みが直れば綺麗な鳥さんのように魅力的になるだろうな」と彼。随分おだてられた猫は立ち上がり、彼の脚の周りをぐるぐる歩き回っては頭をおしつけて嬉しがった。彼はこれにたいそう慇懃に応えた。

「はてさて、何がお前をここに送り込んだのかな。」彼は言った「何がお前をここ、四風の街に送って、お前を歓迎してくれるはずの、ちょうどその扉の前で五つの階段を上らせたんだろう。私がカンバスから目をあげてお前の黄色の目と出会ったときに、お前が思慮深くも逃げ出すのを止めたのは何だったんだろうね。私がカルチェ・ラタンの男であるようにお前はカルチェ・ラタンの猫なのかい? 薔薇色の花飾りのついたガーターを首に巻いているのはどうして?」猫は彼の膝に上がり込んでいて、薄い毛皮を撫でてやると喉を鳴らして座った。

「ちょっと失礼、」猫のごろごろとよく合う悠長な声色で続けて、「少し野暮だと思うかもしれないけど、薔薇色のガーターがどうしても気になるんだよ。こんなに綺麗に花で飾られて、銀の金具で締められて。留め金具が銀なものだから、端の所にあるミントの印がフランス共和国の法律で制定された印のように見える。さてと、どうしてこのガーターは薔薇色の絹で飾り編みしてあるんだろう――どうしてこの銀の留め金具のある絹のガーターがお前の痩せ衰えた喉のところにあるんだろう。これの持ち主がお前の飼い主なのかと質問したら、分別がないかな。彼女は誰か高齢のご婦人で、若き日の虚栄心や愛情の記憶をよすがとし、お前を溺愛して自分自身が愛用した衣装で飾ったのだろうか。ガーターのサイズから見て多分そうなんだろう。このガーターはお前の細い首にあっているから。だがそこで私は気づいたんだな――私はそれはたくさんのことに気づくんだよ――このガーターはもっと広げられるということに。五個ある銀縁の留め穴がその証拠だ。五番目の留め穴は、そこに留め金がいつも嵌っていたかのようにやれている。ふっくらした体つきだ、ということだな。」

猫は満足げに足のつま先を丸めた。外の街はとても静かだった。

彼はぼそぼそと続けた:「なぜお前の女主人さまは、自分の身の回りのものでお前を飾らなければならなかったんだろう。いつもじゃなくても、ほとんどいつも使うものだろうに。どんな成り行きでお前の首にこの絹と銀のかけらをくっつけることになったんだろう。ふとした気まぐれかな――お前が、本来の丸まるとした姿を失う前のお前が、歌いながら彼女の寝室に入り、朝の挨拶をふりまこうとしたときの。もちろん彼女は枕の間に起き上がり、巻髪が肩に揺れて、お前はベッドに飛び上がって、『おはようございます、わがレディよ』と喉を鳴らしたんだ。おお、とてもよくわかる」と椅子の背に頭をあずけたまま欠伸をした。猫はなおも喉を鳴らし、彼の膝頭に肉球を押し付けたり離したりした。

「彼女のことを話そうか、猫よ。彼女はとても美しく――お前の女主人さまのことだぞ」彼は眠たげに呟いた。「髪の色は磨き上げられた濃金だ。描くことだってできそうだ――いやいやカンバスの上じゃない――華麗なる虹の姿よりもさらに素晴らしい陰影が、調子が、色彩と絵具とが必要になるだろうからね。描くのができるのは目を閉じている時にだけ。夢の中でだけ、ふさわしい色が見つかるんだ。両目を描くには雲一つない空の青が――夢の国の空のアズールが要る。唇には眠りの宮の薔薇色が、眉にはいくつもの月に向かって幻想的にそそり立つ山脈に舞う雪が――ああ、この世界の月よりももっと高みにある結晶の月達、夢の国の月達。彼女は――とても――美しい、お前の女主人は。」

言葉は彼の唇の上で途絶え、瞼が落ちた。

猫もまた眠りに落ちていた。痩せこけたお腹の上に頬を乗せ、両手をだらんと下げて。

Chapter 1 of 3