豊島与志雄
豊島与志雄 · Japanese
No translation yet. Request one to move it up the queue.
豊島与志雄 · Japanese
First paragraph preview
Original (Japanese)
高千穂に思う 豊島与志雄 高千穂峰はよい山である。 霧島神宮駅から、バスで約二十分、霧島神宮前に達する。数軒の簡易な旅館がある。その一軒の店先で、六月上旬の梅雨のはれまの或る日、私はただ一人、登山姿といっても、洋服の上衣をぬぎ、ズボンの裾をまくり、靴を足袋とはきかえ、草鞋をつけ、金剛杖を手にしたに過ぎない。ここから高千穂の頂上まで七キロ半ばかりの道程、普通の足なら六時間で往復されるのだ。 狭くて深い谿谷の上に架してある神橋を渡り、石段をのぼり、朱塗りの鳥居をくぐり社務所の前を右折すれば、正面が神宮社殿である。その社殿に至る石段の下、警士の哨舎の前を、左へとって登山道である。 暫くは杉の木立、やがて、暖帯常緑濶葉樹の天然林となる。 この天然林は、山の中腹以上の広い地域に亘っている。伐採はすべて禁ぜられ、神宮聖域の幽邃な風致が保存せられている。 濶葉樹の天然林には、柔かな神秘の影がこもる。鬱蒼たる茂みが日の光を濾過して、美妙な明るみを内にはぐくむ。道にはい出してる蚯蚓は、長さ尺余のものがあり、朽葉の間を鰻のように走って、紫色に光っている。掌大の白い翼の蛾が、苔むした樹幹にとまっていて、怪し
豊島与志雄
Translation status
WaitingLog in to request a translation.
Frequently asked questions
Yes — completely free. This book is in the public domain, so Pagera offers the full text without payment or account requirement. Pagera is funded by advertising.
Free to read
Start reading immediately — no signup required. Create a free account for more books and features.