豊島与志雄
豊島与志雄 · Japanese
No translation yet. Request one to move it up the queue.
豊島与志雄 · Japanese
First paragraph preview
Original (Japanese)
霊気 豊島与志雄 中房温泉は、既に海抜四千八百尺余の高地にあって、日本アルプスの支脈に懐かれている。早朝に温泉を発して、山の尾根伝いに、見上ぐるばかりの急坂を、よじ登りよじ登り、三時間余にして、燕岳の肩にある小屋に出る。流るる汗を拭いながら、ほっと息をついて見渡せば、正に天下の壮観である。目指す槍ヶ岳の尖峰は、屹然と中空に聳え、鋸歯状に輪廓を刻んで、左手穂高岳へ連り、右手はゆるやかに延びて、双六、鷲羽、野口五郎、烏帽子、蓮華、などの諸岳となり、大気澄む日には、遙かに白馬岳をも遠望される。そして高瀬川の峡谷を距てて、深い山襞に雪を含んでる、それら一連の山岳は、一種の霊気を帯びて、人の心に迫ってくる。 山に馴れた案内者達は、また、山の小屋の人達は、のみならず、土地の人々は、それらの雄大な山岳を呼ぶ時、槍ヶ岳、穂高岳、燕岳、野口五郎岳……などとは云わない。岳の一字を略して、槍、穂高、燕、野口五郎……などと云う。そして山に馴れぬ他国の旅客も、一度燕岳の肩から、眼前にアルプス連山を眺むるや否や、「あれが槍ヶ岳……白馬山はどれ……。」などと云うことを止めて、おのずから、自ら知らずに、「あれが槍……
豊島与志雄
Translation status
WaitingLog in to request a translation.
Frequently asked questions
Yes — completely free. This book is in the public domain, so Pagera offers the full text without payment or account requirement. Pagera is funded by advertising.
Free to read
Start reading immediately — no signup required. Create a free account for more books and features.