Chapter 1 of 5

一つの神話

日本の伝説の中で、光の美しさを描いているものでは、何といっても、手力男の命が、あの巌壁を開く時、さしはじめる光の、あの強烈な感じの右に出るものはあるまい。あの伝説、暗さへの没入、それからの回復、この構成の中に注意すべき二つの要素があると思われる。第一は、その光の源である脱出の女神が、巌壁の中でその孤独と、寂寥に堪えがたい時、金鵄の命はそれを慰めんとして、弓五張を並べて、音階的な配列で、かなでたというのである。第二は、巌壁の外で、大衆が、神集いにつどい、大論争をし、ついに、衆議一決、天鈿女の命というアフロディテをして、ほとも露わに、ストリップの大騒ぎをすることにするのである。

私は、五張の弓の寂寥をきわめた音と、外のこの大衆の哄笑の二つとも、娯楽のもつ姿を、みごとに浮彫りにしているように思うのである。

ミトスはいつも、哲学的なものを、民族の血の中から人々に伝えているといわれるが、ここでも、また、何かそんなことを感ぜしめられるのである。

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