Chapter 1 of 1

Chapter 1

真ツ白い嘆かひのうちに、

海を見たり。鴎を見たり。

高きより、風のただ中に、

思ひ出の破片の翻転するをみたり。

夏としなれば、高山に、

真ツ白い嘆きを見たり。

燃ゆる山路を、登りゆきて

頂上の風に吹かれたり。

風に吹かれつ、わが来し方に

茫然としぬ、……涙しぬ。

はてしなき、そが心

母にも、……もとより友にも明さざりき。

しかすがにのぞみのみにて、

拱きて、そがのぞみに圧倒さるる。

わが身を見たり、夏としなれば、

そのやうなわが身を見たり。

(一九三〇・六・一四)

●図書カード

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