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Chapter 1

あし

新美南吉

二ひきの馬が、まどのところでぐうるぐうるとひるねをしていました。

すると、すずしい風がでてきたので、一ぴきがくしゃめをしてめをさましました。

ところが、あとあしがいっぽんしびれていたので、よろよろとよろけてしまいました。

「おやおや。」

そのあしに力をいれようとしても、さっぱりはいりません。

そこでともだちの馬をゆりおこしました。

「たいへんだ、あとあしをいっぽん、だれかにぬすまれてしまった。」

「だって、ちゃんとついてるじゃないか。」

「いやこれはちがう。だれかのあしだ。」

「どうして。」

「ぼくの思うままに歩かないもの。ちょっとこのあしをけとばしてくれ。」

そこで、ともだちの馬は、ひづめでそのあしをぽォんとけとばしました。

「やっぱりこれはぼくのじゃない、いたくないもの。ぼくのあしならいたいはずだ。よし、はやく、ぬすまれたあしをみつけてこよう。」

そこで、その馬はよろよろと歩いてゆきました。

「やァ、椅子がある。椅子がぼくのあしをぬすんだのかもしれない。よし、けとばしてやろう、ぼくのあしならいたいはずだ。」

馬はかたあしで、椅子のあしをけとばしました。

椅子は、いたいとも、なんともいわないで、こわれてしまいました。

馬は、テーブルのあしや、ベッドのあしを、ぽんぽんけってまわりました。けれど、どれもいたいといわなくて、こわれてしまいました。

いくらさがしてもぬすまれたあしはありません。

「ひょっとしたら、あいつがとったのかもしれない。」

と馬は思いました。

そこで、馬はともだちの馬のところへかえってきました。そして、すきをみて、ともだちのあとあしをぽォんとけとばしました。

するとともだちは、

「いたいッ。」

とさけんでとびあがりました。

「そォらみろ、それがぼくのあしだ。きみだろう、ぬすんだのは。」

「このとんまめが。」

ともだちの馬は力いっぱいけかえしました。

しびれがもうなおっていたので、その馬も、

「いたいッ。」

と、とびあがりました。

そして、やっとのことで、じぶんのあしはぬすまれたのではなく、しびれていたのだとわかりました。

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