野村胡堂
野村胡堂 · Japanese
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野村胡堂 · Japanese
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Original (Japanese)
本郷菊坂の六軒長屋――袋路地の一番奧の左側に住んでゐる、烏婆アのお六が、その日の朝、無慘な死骸になつて發見されたのです。 見付けたのは、人もあらうに、隣に住んでゐる大工の金五郎の娘お美乃。親孝行で綺麗で、掃溜に鶴の降りたやうな清純な感じのするのが、幾日か滯つた日濟しの金――と言つても、緡に差した鳥目を二本、袂で隱してそつと裏口から覗くと、開けつ放したまゝの見通しの次の間に、人相のよくない烏婆アが、手拭で縊り殺されて、凄じくも引つくり返つて居たのです。 「あツ、大變、――誰か、來て下さい」 お美乃は思はず悲鳴をあげました。確り者と言つても、取つてたつた十八の娘が、不意に鼻の先へ眼を剥いた白髮ツ首を突き付けられたのですから、驚いたのも無理はありません。 「何んだえ、お美乃さんぢやないか」 眞つ先に應へてくれたのは、一間半ばかりの路地を距てて筋向うに住んでゐる、鑄掛屋の岩吉でした。五十二三の世をも人をも諦めたやうな獨り者で、これから鑄掛道具を引つ擔いで出かけようと言ふところへ、この悲鳴を聽かされたのです。 「鑄掛屋の小父さん、た、大變ですよ」 「何處だい、お美乃さん」 お六婆アの家の表は、ま
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