Chapter 1 of 1

Chapter 1

ああ戀人の家なれば

幾度そこを行ききずり

空しくかへるたそがれの

雲つれなきを恨みんや

水は流れて南する

ゆかしき庭にそそげども

たが放ちたる花中の

艶なる戀もしらでやは

垣間み見ゆるほほづきの

赤きを人の脣に

情なくふくむ日もあらば

悲しき子等はいかにせん

例へば森に烏なき

朝ざむ告ぐる冬の日も

さびしき興に言よせて

行く子ありとは知るやしらずや

ああ空しくて往來ずり

狂者に似たるふりは知るも

からたちの垣深うして

君がうれひのとどきあへず。

●図書カード

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