Chapter 1 of 3
一
人は結婚して夫婦になれば、だれでもどうしたら二人のあいだがつねに幸福に結びついてゆかれるだろうかと考えて、できるだけの努力をしようと思わない人はないでしょう。私たちが子供をあたえられると、どうかしてこの子を立派な人になるように教育したい教育したいと思います。けれどもだれも親子のあいだの愛情が進歩してゆくように、限りなくつづくようにと、祈ったり祝したりする人はないように思います。それは親と子というものは、いわゆる血をわけた仲なので、天然自然に本能的に愛し合っているものだから、愛情の方面は、おたがいに濃やかなれと祈るまでもなく、希望するまでもなく、安心なものだという気があるからでしょう。しかし親子の愛を、ただその本能の力にばかり任せて問題にしないのは、差しつかえないことでしょうか。
親子の愛もまた親と子が双方から多くの努力をしなければ完成することのできないものです。近来いろいろと世上の有様を見るにつけて、親子の愛情の完成は、夫婦の愛の完成とおなじように、すべての人々によってふかく考えられ、強く主張されなければならないことだと、もっとも切に感じています。