Chapter 1 of 8
總論
一、人間生涯の内、體ほど大切なるものはなし。諺に云ふ通り命の物だねなれば、何職何商買に限らず、先第一己の體を養生し、病氣に懸らぬよう注意て、其上病む時は早く醫治を受けて、天壽を終るの道を知る事、人間要用の心得なるべし。一、醫は病氣を治す計りの職業に非ず。其病氣の出來ぬように養生法を吟味し人に傳へて、千人病むものは五百人にてすみ、五百人は二百にてすむように致し、其上病むものは早く治るように療治致し、總て人體を強壯にし、長命させるように心を用ゆる事、是醫道の根本なり。一、世人、養生と思ふて不養生をなし、不養生と思ふ事返て養生になる事あり。或は知らずに不養生をなす事澤山有り。故に今平常素人の心得置くべき養生の事を有増爰に載するものなり。