Chapter 1 of 4

始球式の投手

我輩は運動が大好きである。好きなばかりでは無い。人間には必要欠くべからざるものであると信ずる。であるから、この間遣って来た米国野球商売人の始球式には、我輩も大いに進んで球を投って遣った次第である、華盛頓の学生といい、リーチ・オール・アメリカンといい、その技倆はとにかく、実に立派な体格を有しておった。それと並んでみると日本人は実に小さい。身体は小さくとも仕方は無いが、その弱々しい有様は如何にも残念である。これを発達せしむるには是非運動を盛んにせなければならぬ。我輩は真面目に百二十五歳生きるといっているが、その養生法としてはあらゆる欲情の節制もあろうが、運動をするという事はその中の重なる一つである。我輩は毎朝時を定めて庭内を散歩する。この散歩は他人にありては必ずしも運動では無いかも知れぬが、我輩には唯一の運動である。なにも運動だからといって、ベースボールやテニスを遣る必要は無い。その人の身体及び趣好に適した運動を遣れば好いのである。

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