Chapter 1 of 8
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●目次 序|綱渡りの現実|移民通信|プラムパゴ中隊|空の脱走者|死界から| 百姓雑兵|飛ぶ橇――アイヌ民族の為めに
僕が詩の仕事の上で、抒情詩の製作に許り、執着してゐないで、長い形式の叙事詩をも手掛け今後もそれを続けてゆかうとする気持には、色々の理由があります。 その一つの理由に挙げられることは叙事詩は、短かい詩とはまたちがつた持味があつて、将来大衆の詩に対する興味と愛着を、この叙事詩の完成によつて一層ふかめられると考へてゐるからです。 それに詩人にしても、抒情詩から、叙事詩へ移ることが、はるかに詩人の感情発展のすがたとしても、詩から小説へ移るよりもかなり必然的なものが多いのです。 また叙事詩は、小説の面白さのもつてゐない、面白さ、良さがあり、感情的な高さに於いても、詩は散文の比ではありません。日本には古来から短い形式でなかなか完成された表現形式をもつて、俳句短歌などがあるだけにこの根強い短詩形の伝統をうち破るといふ叙事詩の仕事は形式が長いだけそれだけ長さの量を質的に充実させてゆくといふ企ては一層仕事の困難さを伝へます。僕はいま日本に叙事詩が生れなければならない現実的な環境と必然性とを考へ当分この長詩の形式を追求していきたい考へです。茲[くさかんむりのない玄玄の形の字]に一冊まとめ一般大衆の批評にうつたへることが出来得たことを僕は作者として悦こばしく思ふものです。 一九三五年六月 小熊秀雄
――綱渡りは公衆の面前に、真逆さまに墜落して横死した、この詩は彼のポケットにあつたものである