Chapter 1 of 4

むかし、むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがありました。まいにち、おじいさんは山へしば刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。

ある日、おばあさんが、川のそばで、せっせと洗濯をしていますと、川上から、大きな桃が一つ、

「ドンブラコッコ、スッコッコ。

ドンブラコッコ、スッコッコ。」

と流れて来ました。

「おやおや、これはみごとな桃だこと。おじいさんへのおみやげに、どれどれ、うちへ持って帰りましょう。」

おばあさんは、そう言いながら、腰をかがめて桃を取ろうとしましたが、遠くって手がとどきません。おばあさんはそこで、

「あっちの水は、かあらいぞ。

こっちの水は、ああまいぞ。

かあらい水は、よけて来い。

ああまい水に、よって来い。

と歌いながら、手をたたきました。すると桃はまた、

「ドンブラコッコ、スッコッコ。

ドンブラコッコ、スッコッコ。」

といいながら、おばあさんの前へ流れて来ました。おばあさんはにこにこしながら、

「早くおじいさんと二人で分けて食べましょう。」

と言って、桃をひろい上げて、洗濯物といっしょにたらいの中に入れて、えっちら、おっちら、かかえておうちへ帰りました。

夕方になってやっと、おじいさんは山からしばを背負って帰って来ました。

「おばあさん、今帰ったよ。」

「おや、おじいさん、おかいんなさい。待っていましたよ。さあ、早くお上がんなさい。いいものを上げますから。」

「それはありがたいな。何だね、そのいいものというのは。」

こういいながら、おじいさんはわらじをぬいで、上に上がりました。その間に、おばあさんは戸棚の中からさっきの桃を重そうにかかえて来て、

「ほら、ごらんなさいこの桃を。」

と言いました。

「ほほう、これはこれは。どこからこんなみごとな桃を買って来た。」

「いいえ、買って来たのではありません。今日川で拾って来たのですよ。」

「え、なに、川で拾って来た。それはいよいよめずらしい。」

こうおじいさんは言いながら、桃を両手にのせて、ためつ、すがめつ、ながめていますと、だしぬけに、桃はぽんと中から二つに割れて、

「おぎゃあ、おぎゃあ。」

と勇ましいうぶ声を上げながら、かわいらしい赤さんが元気よくとび出しました。

「おやおや、まあ。」

おじいさんも、おばあさんも、びっくりして、二人いっしょに声を立てました。

「まあまあ、わたしたちが、へいぜい、どうかして子供が一人ほしい、ほしいと言っていたものだから、きっと神さまがこの子をさずけて下さったにちがいない。」

おじいさんも、おばあさんも、うれしがって、こう言いました。

そこであわてておじいさんがお湯をわかすやら、おばあさんがむつきをそろえるやら、大さわぎをして、赤さんを抱き上げて、うぶ湯をつかわせました。するといきなり、

「うん。」

と言いながら、赤さんは抱いているおばあさんの手をはねのけました。

「おやおや、何という元気のいい子だろう。」

おじいさんとおばあさんは、こう言って顔を見合わせながら、「あッは、あッは。」とおもしろそうに笑いました。

そして桃の中から生まれた子だというので、この子に桃太郎という名をつけました。

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