Chapter 1 of 1
Chapter 1
貴族の表情をこさえるためにハルピンの白系露人の女はジーッと物を見すえてうっかり動揺の見にくさを見せまえとし、古い宝石の腕輪や首かざりやピンに品物以上を物語らせようとし、窮屈なほど口元をすぼめて上品さを見せんとしている。
いくら金髪で、純粋のロシア人であってもこのロシア人はちっとも値打のないロシア人今の世界中でロシア人の値打は社会主義サヴェート共和国を建設して絶大な成功と自信とを握っているところにあるんだがいまだに帝制の昔にかえる日を夢見ているこの女達の貴族的な行儀や作法や表情やそんなことを何か得がたい値打のようにあこがれている、ブルジョア根性の奴等はどこかにいないかその写真の女はハルピンのカフェーにうようよと、ねたましそうに憎らしそうに母国のロシアを見返している値打のないその女達だ。
●図書カード