Chapter 1 of 5

十二年は有島君のことだの、武者小路君のことだの、地震だの、大杉君のことだの、いろいろなことがあつた。尠くとも作品そのものよりも、実際的に衝動を受けたことの方が多かつた。それに、私の一身上から言つても、半ば以上を旅に費したりして、しみじみ筆硯に親しんでゐる暇がなかつた。

静かに考へなければならない時がまたやつて来たやうな気がした。島崎君は老年に徹するといふことをその全集の序言で言つてゐるが、私はその反対に、再び青年にならなければならないやうな気がした。再び青年になつて、あの時分のやうな心持で勉強しなければ、これからの生を満足に送つて行くことは出来さうには思はれなかつた。

ずつと初めに帰らう。そして一生懸命に勉強しやう! これが私の今の心持であつた。

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