Chapter 1 of 1

Chapter 1

よそ人のあざむが如く、君も亦あざみ給ふか

我君よ、君はた知らじ、覺りえじ、世に不思議にも

俤のかくは移ろひ、變りたる深きいはれを、

そは君がたへなる色を仰ぎ見し惑ひ心地ぞ。

我心、君もし知らば、『憐愍』のいかで堪ふべき

かうやうのつらき恥目に我心惱ましむるぞ。

見よ、「愛」は君います邊、のびらかに心のどけく、

廣大の無邊力をぞ安んじて振ひ行ふ。

それ茲に怯え戰くわが生氣、逐ひやらはれて

家も無く、あるは苦み、あるは失せ、今たゞ「愛」は

殘りゐてふみ止まれる獨住、心地もよきか、

思ふまゝ君を仰ぐも羨まし、これわが顏の

さま變る故と知らずや。默しつゝ唯茫然と

われこゝに佇みきけば、官能の逃げ惑ふ聲。

●図書カード

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