Chapter 1 of 26
本書の履歴
『青空のリスタート』は、一九九二年九月三十日付けで、ソフトバンクから紙の本として出した。
一九九〇年一月号から一九九二年三月号にかけて、同社の『パソコン・マガジン』に「インサイドウォッチャー」と題して連載していたコラムを、まとめたものだ。
当時の私は、コンピューター関連企業のスタッフにインタビューして、方向付けを探るといった記事をたくさん書いていた。編集部が用意した「インサイドウォッチャー」という連載タイトルには、人にまつわる企業の内幕話を書いて欲しいというライターへの期待が現れている。
その後の私の道筋に、大きな影響を与えた病気と向き合わされたのは、「インサイドウォッチャー」の連載中だった。「WindowsはMS―DOSの暗黒に一条の希望の光をさすか」という原稿のはちゃめちゃぶりには、「今までの流儀は今後一切まかりならぬ」と言い渡された際の逆上がよく現れているように思う。
病が表に顔を出すと、体が動かなくなった。従来の構えでは、書くことにも臨めなくなった。
このコラムだけを、かろうじて書き続ける時期が長く続き、書籍化が決まってからも、各項への言い訳がなかなか用意できなかった。
そんな中、ようやくまとめた本書の後書きで、私は少し違った書き方を見つけたように思う。
『勢い』を失った後の目で読み返してみると、それまでの原稿にはところどころに、ライターという肩書きに引きずられたような無理を感じる。
そのきしみが、本書の後書きにはないように思う。
弱い者が、弱いままに書いた言葉が、波紋のように静かに広がった印象を受ける。
ここできっと、私は何かを捨て、何かを得たのだろう。