Chapter 1 of 1

Chapter 1

夜中の十二時頃、おくさんが寝室からのぞくもう寝ていいですよ

足も頭も出てしまう夜具見たこともない短いふとんの中へたおれるように

夜中に、二、三度はね起きはなれた部屋まで時計を見にゆき広いエンガワ 広いタタミ掃除 めしたき

赤ん坊を背中にくくり破れたふとんを片っ端から解いて洗って綿を入れ縫いはじめては手をはなし買い物に走り洗い物は朝と晩 五本のサオにいっぱい

光がななめにとどく台所の調理台の片隅に 踏台に腰かけおはちの底をかきあつめてようやく茶わんにいっぱい主人たちの数々の御馳走の影さえみえぬ何を食べればいいのか仕方なく立ち上がり

足は棒のように 胸板がうすくなったように目まいのようにつまずく

最初 雇主はいった子供もない 亭主もないそんな人をさがしていたのだその上 田舎から出てきた 三拍子揃うていますわどうもコブ(子供のこと)のついているのはねえ五十過ぎのおくさんはあふれるようににこにこした得意ででもあるかのように

白髪のかみを光らせ 体をそらせている主人奥様の胸はまだふっくらとして 指はなめらかに 口ベニも赤く子供はぞろぞろ だみ声と キンキン声と かみの長い 夜のおそい大学生がお父さま お母さま

一人の女の塗りつぶされた身の上が一人の女をニコニコさせている雇主はわたしのうなじにつり竿を垂れ じっとしている。

●図書カード

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