Chapter 1 of 1

Chapter 1

わたしは途中で一人の女とすれちがった

女のかおは白粉と紅で白く赤く美しかった

背が高くふっくら円かった

年は二十三四

そして藤色チリメンの長袖

厚いフェルト草履の大股でトットッと歩いて行った

それは大変に自慢そうで

からだ全体が得意で一ぱいのようだった

わたしは洗いざらしの浴衣を着て

青じけた顔をうつむけて通りすぎた

わたしは顔をうつむけて通りすぎた

そうしてわたしは振りかえった

振りかえった時

わたしの胸はわくわくとこみ上げた

いくらでも威張りなさい

いくらでもおけつを振りなさい

あなたがそうしてじゃらじゃらしている間に

わたしたちが何をしようとしているか

何処に向かって着々としているか

高慢ちきな娘よ

この陽に焼けたゆがんだ顔で

みすぼらしいわたしたちが何をしでかすか

何をしでかすか

振りかえった時

わたしの胸はわくわくとこみ上げた

わたしの胸は色あせた浴衣の中で焼けた

●図書カード

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