Chapter 1 of 1

Chapter 1

夏の午前よ、いちぢくの葉よ、

葉は、乾いてゐる、ねむげな色をして

風が吹くと揺れてゐる、

よはい枝をもつてゐる……

僕は睡らうか……

電線は空を走る

その電線からのやうに遠く蝉は鳴いてゐる

葉は乾いてゐる、

風が吹いてくると揺れてゐる、

葉は葉で揺れ、枝としても揺れてゐる

僕は睡らうか……

空はしづかに音く、

陽は雲の中に這入つてゐる、

電線は打つづいてゐる

蝉の声は遠くでしてゐる

懐しきものみな去ると。

(一九三三・一〇・八)

●図書カード

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