Chapter 1 of 11

晴天

煙突を眺めるのが好きなひとがゐた。

天気がよいと煙突ばかりを数へてチヨオクでいたづらしながら歩いてゐるとたいへん楽しかつた。又煙突に裂かれる気流のぐあひや、獰猛な煤煙とその方向。及び煙突と煙突との空間が造形ある膨大不可思議な図面。又、飛び去りゆく飛行機の残す空中水脈が人間の眼球神経及び光彩矢条に波及する微妙なる反応。なほ、都市乾燥空気の大圧力と火災報知機の弾力性ボタン間に於けるキン急な相互関係。実に、これらに於ける一大綜合的法則を偶然にも発見するに至つた。試みにこの法則を青色方眼紙上に表はしてみるのに、精緻にして一糸乱れぬ、実に鮮明をきはめたものであつた。

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