Chapter 1 of 4

渡米船上の感激

先達中本誌の余白を借りてデモクラシーに関して一言するところがあった。今回計らずもデモクラシーの本家本元なる米国に渡るを好機会として、自分の述べた事が他人の、ことに先輩の説くところとどれほど符合するか、また背馳するかを見たい心掛である。

横浜を出帆する際、親類を見送りに来られた文学博士遠藤隆吉君に甲板上で遇うたら、同君が『社会及国体研究録』の第一号を手渡しつつ「デモクラシーは国体と相反するような考を抱く人があるので誠に嘆かわしいから、今度このような研究録を出して大に世の惑を釈こう」といわれた。この一言は深く吾輩を感激せしめた。僕は同君には日頃親しみはないけれども、君の手を執て打振るほど悦ばしく思った。しかし口に発したのはただ「ドーゾやってくれたまえ」と繰返すのみであった。

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