Chapter 1 of 3

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彼は越知の狭い町はづれの小作兼自作農の家に生れたそしてこんな南国の山麓の息子たちがそうであるように十八の彼は嶺を越え花崗岩のはすに削られた灰青色の岬の燈台をぐっと海のはてに斜めに回転させそして戸畑の炭坑にスコップをとった

彼は間もなくたくましい労働組合の一員だった彼の上にはすぐれた同僚今村恒夫氏がいた彼等の突撃隊は耳朶の後にピストルを聞きながら断崖のきりぎしを駆け下り坑道に集会を組織したこんな時彼はいつも面と向って誰ひとりに顔をそむけなかった

運動は苦しくブルジョアジー三井は、彼の健康と職業を奪い先輩今村を頼って、彼は上京した古い同僚は真赤な顔をしてどなりつけた―――地方の部署を知れ!彼ははっきりその一語を耳にしめたそして彼はその夜東海道を西え帰ってきた高知、小工業の多い変りばえのせぬ故郷彼は紙のような白けた病体を抱えながらこの部署にぴったりくっつこうと決意した

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