Vol. 2May 2026

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Showing 6,720 of 14,981 titles

家庭の人へ

寺田寅彦

家庭の人へ 寺田寅彦 風呂の寒暖計 今からもう二十余年も昔の話であるが、ドイツに留学していたとき、あちらの婦人の日常生活に関係した理化学的知識が一般に日本の婦人よりも進んでいるということに気のついた事がしばしばあった。例えば下宿のおかみさんなどが、呼鈴や、その電池などの故障があったとき少しの故障なら、たいてい自分で直すのであった。当時はもちろん現在の日本でも

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家庭創造の情熱

宮本百合子

家庭創造の情熱 宮本百合子 すこし物ごとを真面目に考える今日の世代の若い人たちが、自分たちの結婚生活に入ろうとするとき、生涯向上する情熱を喪わない夫婦として生きたいと願わない人はおそらくないだろうと思う。 この願いは、或る意味では良人になろうとする青年よりも却って妻になろうとする若い女性たちの心に、一層痛切に感じられていることだとも云えるだろう。若い女性たち

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いい家庭の又の姿

宮本百合子

いい家庭の又の姿 宮本百合子 光ちゃんのお父さん小野宮吉さんは、お亡りになったから、この写真にうつることは出来ません。けれども、鑑子さんは母として音楽家として生活と芸術とのために実に勤勉に一心に毎日を暮し、光ちゃんも益々いい少女として成長している一家の空気は、家庭としてやはり十分いい家庭の一つに数えられる資格をそなえていると思います。今日の私たちの心持のなか

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家庭と学生

宮本百合子

家庭と学生 宮本百合子 今日家庭というものを考える私たちの心持は、おのずから多面複雑だと思う。 家庭は今日大事とされている。貯蓄のことも、生めよ、殖せよということも、モラル粛正も、専ら家庭内の実行にかけられている。 昨夜の夕刊には、大蔵省の初の月給振替払いの日のことがのっていた。月給百五十円以上の人々は、現金としては半額しか入っていない月給袋をうけとった。す

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家庭の幸福

太宰治

「官僚が悪い」という言葉は、所謂「清く明るくほがらかに」などという言葉と同様に、いかにも間が抜けて陳腐で、馬鹿らしくさえ感ぜられて、私には「官僚」という種属の正体はどんなものなのか、また、それが、どんな具合いに悪いのか、どうも、色あざやかには実感せられなかったのである。問題外、関心無し、そんな気持に近かった。つまり、役人は威張る、それだけの事なのではなかろう

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家庭料理の話

北大路魯山人

世間の人は、自分の身近にある有価値な、美味いものを利用することに無頓着のようだ。 出盛りのさんまより場違いのたいをご馳走と思い込む、卑しい陋習から抜けきらないところに原因があるようだ。 「腐ってもたい」などという言葉は、うかうか聞いていると、諺としてはちょっと面白いが、料理の方では大変な邪魔となって害がある。 また、料理人のつくったものなら、なんでも結構なお

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家庭の痛恨

萩原朔太郎

家庭の痛恨 萩原朔太郎 西洋の風習では、その妻が良人と共に社交に出で、多くの異性と舞踏をし、宴会の席上で酒をすすめ、ピアノを弾き、唄をうたひ、文学を論じ、時に艶めかしき媚態を示して、人々の注意と愛情を惹かうと努める。然るに東洋の風習は、これと全くちがつて居る。我々の社会にあつては、すべてさうした女の仕事が、芸者と称する特殊な職業婦人に一任されてる。芸者等は、

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家庭習慣の教えを論ず

福沢諭吉

家庭習慣の教えを論ず 福沢諭吉 人間の腹より生まれ出でたるものは、犬にもあらずまた豕にもあらず、取りも直さず人間なり。いやしくも人間と名の附く動物なれば、犬豕等の畜類とは自ずから区別なかるべからず。世人が毎度いう通りに、まさしく人は万物の霊にして、生まれ落ちし始めより、種類も違い、階級にも斯くまで区別のあることなれば、その仕事にもまた区別なかるべからず。人に

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家庭裁判

宮本百合子

家庭裁判 宮本百合子 (被告) 女慧しゅうして牛売りそこね (判決) こういった諺はみんな男が作ったものなんです、そしてまた女をこんな風にした社会を作ったのも男達なんです、ですけど「女の賢さはほんとうのものじゃない、小ざかしくて失敗や損ばかりする」といった男たちはほんとうに賢かったでしょうか、小慧しい男たちが政治や軍事を自由にし女も含めた国民の大部分がその小

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家庭の読書室

内田魯庵

家庭の読書室 内田魯庵 近ごろは一般に大分本を読むやうになつた。が、女は相変らず読まんナ、若い女どもは無暗と新らしがつてるが、小説を少しばかり読むものは読書家がつてる。尤も新聞さへ碌々読まんのが多いのだから、新らしい小説の一冊も読むものは読書家然としてゐられるが、未だ/\読書国民とは云はれない。 第一、書物を買ふ銭を惜しむ事は呆れて了ふ。要りもしない、一年に

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家康

坂口安吾

家康 坂口安吾 徳川家康は狸オヤヂと相場がきまつてゐる。関ヶ原から大坂の陣まで豊臣家を亡すための小細工、嫁をいぢめる姑婆アもよくよく不埒な大狸でないとかほど見えすいた無理難題の言ひがかりはつけないもので、神君だの権現様だの東照公だのと言ひはやす裏側で民衆の口は狸オヤヂといふ。手口が狸婆アの親類筋であるからで、民衆のかういふ勘はたしかなものだ。 けれども家康が

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家康

坂口安吾

徳川家康は狸オヤジと相場がきまっている。関ヶ原から大坂の陣まで豊臣家を亡すための小細工、嫁をいじめる姑婆アもよくよく不埓な大狸でないとかほど見えすいた無理難題の言いがかりはつけないもので、神君だの権現様だの東照公だのと言いはやす裏側で民衆の口は狸オヤジという。手口が狸婆アの親類筋であるからで、民衆のこういう勘はたしかなものだ。 けれども家康が三河生来の狸かと

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家族

中原中也

朝な朝な、東の空の紫色の雲の中に、一つの家族がありました。 まづお婆さんが目を覚まし、家中のお掃除を始めます。恰度その時女中は台所で、竈の下を焚き付けてゐます。お婆さんはお掃除が好きで、大好きで、時偶女中がお掃除をしようものなら直ぐまた自分がやりなほすといふふうでした。といつてこのお婆さんは、何もそれ以上に邪慳だといふのでもなく、六ヶ敷屋でもないのでした。さ

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家族といふもの

亀井勝一郎

青年時代に、自我にめざむるにつれて、人は次第に家族から孤立せざるをえないやうになる。自分の友情、恋愛、求道については、両親は必ずしも良き教師ではない。むしろ敵対者としてあらはれる場合が多いであらう。これは家族制度そのものの罪とのみは言へまい。どのやうに自由な家族であつても青年はひとたびは離反するであらう。孤立せんとする精神にとつては、与へられたものはすべて不

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家のあるじとして気になること

カフカフランツ

第一の説。オドラデクという言葉はスラブ語が起源で、それは語形からも明らかだとされている。第二の説。ドイツ語こそが起源であり、スラブ語はその影響を受けたにすぎない。いずれにせよ、どちらの説も頼りない。とりあえずもっともらしく考えるとすれば、どちらも的はずれで、そもそもそんなことをしても、この言葉の意味がわかるわけではない、となる。 むろん、そんなことをつぶさに

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家畜食に甘んずる多くの人々

北大路魯山人

ひとは偉そうな顔はしていても、また自由、自由と、自由を叫んでみても、みながみな、家畜に等しく、宛てがわれたままの食べ物を口にして、うまいとかまずいとかいってはいるが、日常の事務的行為として三度の食事の不自由に気がつかない。 大部分の人間が、女房の宛てがい扶持、弁当屋、料理屋の宛てがい食に従い、いささかも不自由を忍んでの食事とも、奇妙な食生活とも気にしていない

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アッシャア家の覆滅

ポーエドガー・アラン

その年の秋の、重々しい雲が空に低く垂れ懸った、ものうい、暗い、ひそりとした日のことである。私は終日、たった独り馬に跨って怪しく荒れ果てた田舎路を通って行った。そうして日脚が傾いた時分に、ようよう陰鬱なアッシャアの邸が見える所まで辿り着いた。私には其れがどう云う訳だか分らない―――が、その建物を一と目見るや否や、或る堪え難い悲しい気持ちが、私の胸に泌み徹って行

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家長制度

宮沢賢治

家長制度 宮沢賢治 火皿は油煙をふりみだし、炉の向ふにはここの主人が、大黒柱を二きれみじかく切って投げたといふふうにどっしりがたりと膝をそろへて座ってゐる。 その息子らがさっき音なく外の闇から帰ってきた。肩はばひろくけらを着て、汗ですっかり寒天みたいに黒びかりする四匹か五匹の巨きな馬をがらんとくらい厩のなかへ引いて入れ、なにかいろいろまじなひみたいなことをし

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家長の心配

カフカフランツ

ある人びとは、「オドラデク」という言葉はスラヴ語から出ている、といって、それを根拠にしてこの言葉の成立を証明しようとしている。ほかの人びとはまた、この言葉はドイツ語から出ているものであり、ただスラヴ語の影響を受けているだけだ、といっている。この二つの解釈が不確かなことは、どちらもあたってはいないという結論を下してもきっと正しいのだ、と思わせる。ことに、そのど

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容貌

太宰治

私の顔は、このごろまた、ひとまわり大きくなったようである。もとから、小さい顔ではなかったが、このごろまた、ひとまわり大きくなった。美男子というものは、顔が小さくきちんとまとまっているものである。顔の非常に大きい美男子というのは、あまり実例が無いように思われる。想像する事も、むずかしい。顔の大きい人は、すべてを素直にあきらめて、「立派」あるいは「荘厳」あるいは

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容貌

太宰治

私の顏は、このごろまた、ひとまはり大きくなつたやうである。もとから、小さい顏ではなかつたが、このごろまた、ひとまはり大きくなつた。美男子といふものは、顏が小さくきちんとまとまつてゐるものである。顏の非常に大きい美男子といふのは、あまり實例が無いやうに思はれる。想像する事も、むづかしい。顏の大きい人は、すべてを素直にあきらめて、「立派」あるひは「莊嚴」あるひは

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かさぬ宿

末吉安持

五里の青野に行き暮れて、 山下街の片門に、 いかで一夜の宿乞ふと 都のなまり、――うらわかき 学生づれの七人は 手にこそしたれ、百合の花。 家の下部が、老い屈み、 嗄れごゑに、竹箒 とる手とどめて物いへば、 二室へだてし簾障子の 奥に乳母よぶ――こは人の 百合の花なる白き影。 親なき君をいつく家の あなあやにくと、しとやかに 乳母はいなみぬ。よし、さらば、

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宿命

萩原朔太郎

序に代へて 散文詩とは何だらうか。西洋近代に於けるその文學の創見者は、普通にボードレエルだと言はれてゐるが、彼によれば、一定の韻律法則を無視し、自由の散文形式で書きながら、しかも全體に音樂的節奏が高く、且つ藝術美の香氣が高い文章を、散文詩と言ふことになるのである。そこでこの觀念からすると、今日我が國で普通に自由詩と呼んでる文學中での、特に秀れてやや上乘のもの

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