Vol. 2May 2026

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14,981종 중 12,552종 표시

虹の橋

久生十蘭

北川千代は栃木刑務所で服役中の受刑者で、公訴の罪名は傷害致死、刑期は六年、二十八年の三月に確定し、小菅の東京拘置所から栃木刑務所に移され、その年の七月に所内で女児を分娩した。 受刑者名簿には北川千代となっているが、記名の女性は二十七年の九月に淡路島の三熊山で死亡しているので、もちろん当人であろうわけはない。北川千代の名で服役しているのは、真山あさひという別個

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虹の橋

野口雨情

ある山国に、美しい湖がありました。 この湖には、昔から、いろいろな不思議なことがありました。青々と澄んだ水が急に濁つたり、風もないのに浪が立つたり、空が曇つて星のない晩でも、湖の中にはお星様が映つて見えることなぞもありました。それには何か深い理由があるだらうと、村の人達は思つてゐましたが、湖の中におゐでになる水神様のほかには、誰も知りませんでした。 いろいろ

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虹猫の大女退治

宮原晃一郎

虹猫の大女退治 宮原晃一郎 木精の国をたつて行つた虹猫は、しばらく旅行をしてゐるうち、ユタカの国といふ大へん美しい国につきました。 こゝはふしぎな国でした。大きな森もあれば、えもいはれぬ色や匂ひのする花の一ぱいに生えた大きな/\野原もありました。空はいつも青々とすみわたつて、その国に住まつてゐる人たちはいつも何の不平もなささうに、にこ/\してゐます。でも、た

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虹猫と木精

宮原晃一郎

虹猫と木精 宮原晃一郎 第一回の旅行をすまして、お家へ帰つた虹猫は、第二回の旅行にかゝりました。 或日、れいのとほり、仕度をして、ぶらりと家を出て、どことはなしに、やつて行きますと、とうとう木精の国に来てしまひました。木精といふやつは面白い、愉快な妖精で、人に害をするやうなこともなく、たゞ鳥のやうに木にすまつてゐるのです。けれども鳥とちがつて、飛ぶことはでき

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虹猫の話

宮原晃一郎

虹猫の話 宮原晃一郎 いつの頃か、あるところに一疋の猫がゐました。この猫はあたりまへの猫とはちがつた猫で、お伽の国から来たものでした。お伽の国の猫は毛色がまつたく別でした。まづその鼻の色は菫の色をしてゐます。それに目玉はあゐ、耳朶はうす青、前足はみどり、胴体は黄、うしろ足は橙色で、尾は赤です。ですから、ちやうど、虹のやうに七色をしたふしぎな猫でした。 その虹

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虹の絵の具皿 (十力の金剛石)

宮沢賢治

むかし、ある霧のふかい朝でした。 王子はみんながちょっといなくなったひまに、玻璃でたたんだ自分のお室から、ひょいっと芝生へ飛びおりました。 そして蜂雀のついた青い大きな帽子を急いでかぶって、どんどん向こうへかけ出しました。 「王子さま。王子さま。どちらにいらっしゃいますか。はて、王子さま」 と、年よりのけらいが、室の中であっちを向いたりこっちを向いたりして叫

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牧野信一

若しも貴方が妾に裏切るやうな事があれば、妾は屹度貴方を殺さずには置きませんよ、と常に云つてゐた女が、いざとなつたら他愛もなく此方を棄てゝ行つた。此方こそかうして未練がましくも折に触れては女の事を思ひ出して居るが向うでは……妾は自分の将来を考へなければなりません。貴方のやうな全く取得のない不真面目なさうして涙を持たぬ人はつくづく愛想が尽きたのです。貴方のやうな

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蚊帳

織田作之助

彼の家は池の前にあった。蚊が多かった。 新婚の夜、彼は妻と二人で蚊帳を釣った。永い恋仲だったのだ。蚊帳の中で螢を飛ばした。妻の白い体の上を、スイスイと青い灯があえかに飛んだ。 痩せているくせに暑がりの妻は彼の前を恥しがらなかった。妻は彼より一つ歳上だった。彼の方がうぶらしく恥しがっていた。 妻は池の風に汗を乾かしてから寝ついたが、明け方にはぐっしょり寝汗をか

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蚊帳の研究

寺田寅彦

自分は蚊帳が嫌いである。しかし蚊に責められるのはそれ以上に嫌いだから仕方なしに毎晩このいやな蚊帳へもぐり込んで我慢している、そしてもう少し暑苦しくない心持のよい蚊帳が出来ぬだろうかと思う。一夜寝ながら色々考えてみた。 第一に蚊帳の内と外とで温度がどれだけ違うだろうかと思って夜中に寒暖計を持って出たり入ったりしてみたが残念ながら大した差はなかった。しかし人体に

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蚊帳の釣手

沖野岩三郎

蚊帳の釣手 沖野岩三郎 一 万作は十二歳になりました。けれども馬鹿だから字を書く事も本を読む事も出来ません。数の勘定もやつと一から十二までしか知らないのでした。 「おい万作! お前は幾歳になつた。」と問ひますと「十二です!」と元気よく答へますが、其時「来年は何歳になる?」と問ひますと、もう黙つてしまひます。それは、十二の次が十三だといふ事を知らないからであり

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蚊遣り

宮本百合子

蚊遣り 宮本百合子 丘をはさんで点綴するくさぶき屋の低い軒端から、森かげや小川の岸に小さく長閑に立っている百姓小舎のくすぶった破風から晴れた星空に立ちのぼってゆく蚊やりの煙はいかにも遠い昔の大和民族の生活を偲ばせるようで床しいものです。此の夏は福島のふるさとに帰って祖母達と久しぶりで此の俳味に富んだ何とも云われぬ古風な懐しい情景に親しむことができました。夕方

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斎藤茂吉

蚤 斎藤茂吉 蚤という昆虫は夏分になると至るところに居るが、安眠を妨害して、困りものである。 生れ故郷の村にも蚤は沢山いたが、東京という大都会には蚤なんか居ないだろうと想像して、さて東京に来てみると、東京にも蚤が沢山いた。 それは明治二十九年時分の話で、僕は浅草の三筋町に住んでいた。その家(浅草医院といった)の診察室に絨緞が敷いてあったが、その絨緞を一寸めく

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蛆の効用

寺田寅彦

虫の中でも人間に評判のよくないものの随一は蛆である。「蛆虫めら」というのは最高度の軽侮を意味するエピセットである。これはかれらが腐肉や糞堆をその定住の楽土としているからであろう。形態的には蜂の子やまた蚕とも、それほどひどくちがって特別に先験的に憎むべく、いやしむべき素質を具備しているわけではないのである。それどころか、かれらが人間から軽侮される生活そのものが

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蛇いちご

宮原晃一郎

蛇いちご 宮原晃一郎 林の中に行つてみると、紅のいろをした美しい蛇いちごが生つてをります。 「蛇いちごを食べてはいけないよ。あれは毒ですからね。あれを食べると、体は溶けて水になつてしまひますよ。」 お母さん達はかう子供に教へます。恐しい毒な蛇いちご、みかけは大変美しくて、人の体をとかしてしまふ蛇いちご。本当にさうなんでせうか? 私は知りません。けれどもこんな

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蛇つかひ

鈴木三重吉

蛇つかひ 鈴木三重吉 インドだのエジプトだのといふやうな熱帯地方へいきますと、蛇使と言つて蛇にいろ/\のことをさせて見せる、わたり歩きの見世物師がゐます。たいてい五六人で組をつくつて、ありとあらゆるさま/″\の蛇のはいつた、籠や袋や箱をかついで、町から町へとめぐつて歩き、人どほりのおほい広場や空地で、人をあつめて見せるのです。人がいゝかげんにあつまりますと、

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蛇性の婬  雷峰怪蹟

田中貢太郎

紀の国の三輪が崎に大宅竹助と云うものがあって、海郎どもあまた養い、鰭の広物、狭き物を尽して漁り、家豊に暮していたが、三人の小供があって、上の男の子は、父に代って家を治め、次は女の子で大和の方へ嫁入し、三番目は又男の子で、それは豊雄と云って物優しい生れであった。常に都風たる事を好んで、過活心がないので、家の者は学者か僧侶かにするつもりで、新宮の神奴安部弓麿の許

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蛇怨

田中貢太郎

蛇怨 田中貢太郎 高知県高岡郡の奥の越知と云う山村に、樽の滝と云う数十丈の大瀑がある。それは村の南に当る山腹にある瀑で、その北になったかなりの渓谷を距てた処には安徳天皇の御陵伝説地として有名な横倉と云う山がある。初夏の比その横倉山から眺めると、瀑は半ば以上を新緑の上に見せて、その銀色の大樽を倒しまにしたような水が鼕々として落ちているので、土地の人は大樽と呼ん

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織田作之助

登勢は一人娘である。弟や妹のないのが寂しく、生んでくださいとせがんでも、そのたび母の耳を赧くさせながら、何年かたち十四歳に母は五十一で思いがけず姙った。母はまた赧くなり、そして女の子を生んだがその代り母はとられた。すぐ乳母を雇い入れたところ、おりから乳母はかぜけがあり、それがうつったのか赤児は生れて十日目に死んだ。父親は傷心のあまりそれから半年たたぬうちにな

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牧野信一

「今夜こそ書きませう。……えゝと何から先に書かうかしら? ……候文も古くさいし、言文一致ではだら/\するし……」 光子さんは、紙をひろげてペンを執りましたが、何から先へ書いたらいゝか? と思ふと、迷はずには居られませんでした。一年程前に別れた春子さんに、今夜こそ手紙を書かなければならないと思つてゐるのです。それはもう、四日も五日も六日も前から始終光子さんの心

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上村松園

螢 上村松園 この図を描くに至つた動機と云ふやうな事もありませんが曾て妾は一茶の句であつたか蕪村の句であつたか、それはよく覚えませんが、蚊帳の句を読んで面白いと思つて居りました。併しそれを別に画にして見たいと云ふ程の考へもなく過ぎました。 夏の頃フト蚊帳の記憶を喚び起して、蚊帳に螢を配したならば面白かろうと思ひ付いたのが此画を製作するに至りました径路でした。

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蛍の灯台

野口雨情

童謡は、童心から生れる言葉の音楽であります。童心から生れる言葉の音楽が、芸術的価値があつたならば、童謡と言ふことが出来ます。 又、童謡は、童心から発した自然詩であると言ふことも出来ます。童心から発した自然詩は、純真不の芸術であります。純真不の芸術が歌謡であつたとき童謡となるのであります。 童謡は、童心より生発する言葉の音楽であり、自然詩でありますから、表現は

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