Vol. 2May 2026

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14,981종 중 13,152종 표시

車中有感

上村松園

車中有感 上村松園 汽車の旅をして、いちばん愉しいことは、窓にもたれて、ぼんやりと流れてゆく風景を眺めていることである。 いろいろの形をした山の移り変りや、河の曲折などを眺めていると、何がなし有難い気持ちになって、熱いものを感じるのである。 ふっと、一瞬にして通りすぎた谷間の朽ちた懸け橋に、紅い蔦が緋の紐のように絡みついているのを見て、瞬時に、ある絵の構図を

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車屋の小供

田中貢太郎

明治も初めの方で、背後に武者絵などのついた人力車が東京市中を往来している比のことであった。その車を曳いている車夫の一人で、女房に死なれて、手足纏いになる男の子を隣家へ頼んで置いて、稼ぎに出かけて往く者があった。 小供は三歳位であった。隣家の者はおもがとおり一片の世話であったから、夜になると、父親の車夫が帰らなくとも、 「もう、爺親も帰って来るから、我家へ往っ

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車引耕介に答ふ

岸田国士

車引耕介に答ふ 岸田國士 十一月三十日の壁評論「新劇さびれ戯曲栄ゆ」を読んで、小生が徒らに空言を弄するやうに思はれては困るから、「世界的水準に迫るのも遠からぬ各戯曲が何故新劇を興隆させることができぬかその謎をハツキリ解け」といふ車引氏の注文にちよつと挨拶をしておく。 第一に、この謎は、もう解かれてゐる。新劇に不断の関心をもつてゐるものなら、もうこれを不思議と

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車蝦の茶漬け

北大路魯山人

車蝦の茶漬け 北大路魯山人 えびのぜいたくな茶漬けを紹介しよう。これまた、その材料の吟味いかんによる。これから述べようとするのは、東京の一流てんぷら屋の自慢するまきと称する車えびの一尾七、八匁までの小形のもので、江戸前の生きているのにかぎる。横浜本牧あたりで獲れたまきえびを、生醤油に酒を三割ばかり割った汁で、弱火にかけ、二時間ほど焦げのつかないように煮つめる

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軌道(黙劇)

岸田国士

人物 女。 男。 酔漢。 駅夫。 場所 大都会の郊外に通ずる高速電車の小停留場。 時代 現代。 舞台はプラツトフオームである。 正面に腰掛。 終電車の時刻。 初夏。 自称紳士風の酔漢が、ただ一人、腰掛の上に横はつてゐる。 電話の呼鈴。 職業婦人らしくも見え、それにしては、やや夢想家らしい、それで、どことなく、多分口元であらう――冷たい魅力といふやうなものを有

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もう軍備はいらない

坂口安吾

もう軍備はいらない 坂口安吾 原子バクダンの被害写真が流行しているので、私も買った。ひどいと思った。 しかし、戦争なら、どんな武器を用いたって仕様がないじゃないか、なぜヒロシマやナガサキだけがいけないのだ。いけないのは、原子バクダンじゃなくて、戦争なんだ。 東京だってヒドかったね。ショーバイ柄もあったが、空襲のたび、まだ燃えている焼跡を歩きまわるのがあのころ

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軍服を着た百姓源造の除隊

今野大力

「おお源造よ 帰って来たか」つまごをはき、雪路を踏んで、馬橇の上で別れて行ったあの日、「俺あクジ逃れだ、俺には只一人のお母がいる、お母はおいぼれ……」「でも源造よ、お上はお前や俺等のために、どうにもなんめいぞ、誰ぞと代って下されと、あれ程ねがったんだに 仕方のねい世の中だ 諦められない世の中よ そんだば、元気で行ってこう 源造よ、元気でだぞお!」 戦争におび

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軍用鮫

海野十三

軍用鮫 海野十三 北緯百十三度一分、東経二十三度六分の地点において、楊博士はしずかに釣糸を垂れていた。 そこは嶮岨な屏風岩の上であった。 前には、エメラルドを溶かしこんだようなひろびろとした赤湾が、ゆるい曲線をなしてひらけ空は涯しもしらぬほど高く澄みわたり、おつながりの赤蜻蛉が三組四組五組と適当なる空間をすーいすーいと飛んでいるという、げに麗らかなる秋の午さ

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軍用鼠

海野十三

軍用鼠 海野十三 探偵小説家の梅野十伍は、机の上に原稿用紙を展べて、意気甚だ銷沈していた。 棚の時計を見ると、指針は二時十五分を指していた。それは午後の二時ではなくて、午前の二時であった。カーテンをかかげて外を見ると、ストーブの温か味で汗をかいた硝子戸を透して、まるで深海の底のように黒目も弁かぬ真暗闇が彼を閉じこめていることが分った。 もう数時間すれば夜が明

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軒もる月

樋口一葉

軒もる月 樋口一葉 「我が良人は今宵も帰りのおそくおはしますよ。我が子は早く睡りしに、帰らせ給はゞ興なくや思さん。大路の霜に月氷りて、踏む足いかに冷たからん。炬燵の火もいとよし、酒もあたゝめんばかりなるを。時は今何時にか、あれ、空に聞ゆるは上野の鐘ならん。二ツ三ツ四ツ、八時か、否、九時になりけり。さても遅くおはします事かな、いつも九時のかねは膳の上にて聞き給

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軒もる月

樋口一葉

我が良人は今宵も歸りのおそくおはしますよ、我が子は早く睡りしに歸らせ給はゞ興なくや思さん、大路の霜に月氷りて踏む足いかに冷たからん、炬燵の火もいとよし、酒もあたゝめんばかりなるを、時は今何時にか、あれ、空に聞ゆるは上野の鐘ならん、二つ三つ四つ、八時か、否、九時になりけり、さても遲くおはします事かな、いつも九時のかねは膳の上にて聞き給ふを、それよ今宵よりは一時

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アンリエツトの転地療養日記

岸田国士

二月三日(水曜)曇 いよいよ巴里を離れることになつた。 朝八時、タクシイで、ケエ・ドルセエの停車場に行く。寒い。 病気で転地療養をするのに、大袈裟な用意なんかする必要はないといふパパの意見。 それでも、あゝいふ人の集るところだから、トアレツトのひと通りはといふママの意見。 ルイズ叔母さまも、ママの肩をおもちになる。 汽車の中で、正午の体温を計る。三十七度四分

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転校

平山千代子

転校 平山千代子 誰にとつてもいやなのは転校である。 私は二年になる時に仙台から東京へ、東京で小学校を卒業して、女子大の附属へ入り、その年の九月に名古屋へ、翌年の九月に又、女子大へと、四度、いやな思ひをした。中でも最もいやな思ひ出を残したのが、女学校に這入つてからの二つ、名古屋へと、東京へとである。小学校のときの転校は、それ程、苦痛を感じないうちに、すぐ馴れ

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軽井沢

寺田寅彦

軽井沢 寺田寅彦 十五年ほど前の夏休みに松原湖へ遊びに行った帰りの汽車を軽井沢でおり、ひと汽車だけの時間を利用してこの付近を歩いたことがあった。その時の記憶と今度行って見た軽井沢とで、目についた相違はと言えば、機関車の動力が電気になっていること、停車場前に客待ちのリクショウメンがいなくなって、そのかわりに自動車とバスと、それからいろいろな名前のホテルの制帽を

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軽井沢の夏と秋

片山広子

三月二十四日にTが亡くなつた。その二日ばかり前に私は彼と会つて一時間ばかり話をした。その時も彼は空襲がだんだんひどくなるから母さんは早く軽井沢に行つた方がよろしい、自分たちもすぐあとから行くからと私を急かしてゐた。もし軽井沢から急に東京に帰れない場合は彼の妻の実家である岐阜県の大井町へ行つてみるつもりらしかつた。急に彼に死なれて私は疎開する気もなくなつたけれ

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軽井沢より 〔小川未明君へ。〕

正宗白鳥

小川未明君へ。 先日のある新聞で、二兒を左右に伴つた君の勇ましい寫眞を拜見しました。それからその下に掲げられた君の談話の中に、「少しでもいゝ空氣を子供に吸はせたいために朝早く雨戸を開けてやる。」と云つてゐられるのを讀んで、君の側で君の話を聞いてゐるやうな氣がしました。そして、此方の清涼な空氣を君の天神町の二階まで輸送して上げたいと思ひました。(大阪のある富豪

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軽女

上村松園

軽女 上村松園 数多い忠臣義士物語の中に出てくる女性のうちで、お軽ほど美しい哀れな運命をになった女性は他にないであろう。 お軽は二階でのべ鏡という、――通り言葉に想像される軽女には、わたくしは親しみは持てないが、(京都二条寺町附近)の二文字屋次郎左衛門の娘として深窓にそだち、淑やかな立居の中に京娘のゆかしさを匂わせている、あのお軽には、わたくしは限りない好ま

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軽蔑された翻訳

三木清

我々は我々の書いたものを互にもっと読むようにしたいと思う。私は必ずしもそれを尊重せよというのではない。正直に云って、日本の学界の水準は西洋の学界の水準よりも低いことを認めねばならぬ。そしてものがそれの本質的な価値に相応して尊重されるということは正しいことであり、善いことである。私の求めているのは親切である。日本人は日本人の書いたものを互にもっと親切に読むよう

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輝ける朝

水野仙子

輝ける朝 水野仙子 さうだ、私はそれを忘れないうちに書きとめて置かう。この輝いた喜の消え去らぬうちに、このさわやかな心持のうすれゆかぬうちに……私はこの朝の氣持を、決して忘れる事はないであらうけれども、だからといつて書きとめて置く事の決して無益なことではあるまいと思ふ。却つて私の病に於ける無爲の時間が、その爲に生きこそはしても。 それは昨夜のことであつた。…

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モウタアの輪

田山花袋

モウタアの音がけたゝましくあたりにひゞいて聞えたので、仕度をして待つてゐた二人はそのまゝ裏の石垣になつてゐるところへと出て行つた。外洋の波の高くつてゐるのはそれと指さゝれたけれども、港の内は静かで、昨夜遅く入つて来たらしい二本マストの小さな汽船がそこに斜に横たへられてあるのを眼にしたばかりであつた。モウタアを仕かけたその小さな伝馬は、すぐその向うのところに来

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さかずきの輪廻

小川未明

(この童話はとくに大人のものとして書きました。) 昔、京都に、利助という陶器を造る名人がありましたが、この人の名は、あまり伝わらなかったのであります。一代を通じて寡作でありましたうえに、名利というようなことは、すこしも考えなかった人でしたから、べつに交際をした人も少なく、いい作品ができたときは、ただ自分ひとりで満足しているというふうでありました。 しかし、世

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轆轤首

田中貢太郎

轆轤首 田中貢太郎 一 肥後の菊池家に磯貝平太左衛門武行と云う武士があった。頗る豪勇無雙の士であったが、主家の滅亡後、何を感じたのか仏門に入って、怪量と名乗って諸国を遍歴した。 甲斐の国を遍歴している時、某日唯ある岩山の間で日が暮れた。そこで怪量は恰好な場所を見つけて、笈をおろして横になった。 横になる間もなく月が出た。その月の光が四辺に拡がったかと思うと、

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轢死人

豊島与志雄

轢死人 豊島与志雄 S君が私に次のような話をしてきかした。 「……そういうわけで、私の友人はその男の後からついて行ったそうです。而もその男というのが友人の知人なんです。常識で考えると一寸妙な話ですが、若々しい情熱に駆られてる頃には、知人の死をただじっと見送るようなこともあるらしいです。その気持ちを想像出来ないこともありませんね。まあ自殺の傍観的共犯者とでも云

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