Vol. 2May 2026

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14,981종 중 13,416종 표시

都会の類人猿

牧逸馬

一九二六年二月十四日に、桑港サタア街一一三七番居住の Miss Clara Newman という六十三歳になる独身の老婆が、表て通りの窓に、「貸間あり」の紙札を出した。 これは、亜米利加の都市の素人家町を歩いていると、よく見かける看板で、一尺四方程の厚紙に綺麗に“Room to Let”と書いたのを、正面の応接間などの、往来から眼に付き易い窓硝子の内側へ立て

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都の友へ、B生より

国木田独歩

都の友へ、B生より 国木田独歩 (前略) 久しぶりで孤獨の生活を行つて居る、これも病氣のお蔭かも知れない。色々なことを考へて久しぶりで自己の存在を自覺したやうな氣がする。これは全く孤獨のお蔭だらうと思ふ。此温泉が果して物質的に僕の健康に效能があるか無いか、そんな事は解らないが何しろ温泉は惡くない。少くとも此處の、此家の温泉は惡くない。 森閑とした浴室、長方形

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都の眼

竹久夢二

都の眼 竹久夢二 留吉は稲田の畦に腰かけて遠い山を見ていました。いつも留吉の考えることでありましたが、あの山の向うに、留吉が長いこと行って見たいと思っている都があるのでした。 そこには天子様のお城があって、町はいつもお祭りのように賑かで、町の人達は綺麗な服をきたり、うまいものを食べて、みんな結構な暮をしているのだ。欲しいものは何でも得られるし、見たいものはど

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薄田泣菫

少し前の事だが、Kといふ若い法学士が夜更けて或料理屋の門を出た。酒好きな上に酒よりも好きな妓を相手に夕方から夜半過ぎまで立続けに呷飲りつけたので、大分酔つ払つてゐた。 街灯の灯も点つてゐない真ツ暗がりに、Kは自分の鼻先に脊のひよろ高い男が立塞がつてゐるのを見たので、酔つ払がよくするやうにKは丁寧に帽子を取つてお辞儀をしたが、相手は会釈一つしないのでKは少し然

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正岡子規

○一つ橋外の学校の寄宿舎に居る時に、明日は三角術の試験だというので、ノートを広げてサイン、アルファ、タン、スィータスィータと読んで居るけれど少しも分らぬ。困って居ると友達が酒飲みに行かんかというから、直に一処に飛び出した。いつも行く神保町の洋酒屋へ往って、ラッキョを肴で正宗を飲んだ。自分は五勺飲むのがきまりであるが、この日は一合傾けた。この勢いで帰って三角を

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こまどりと酒

小川未明

夜おそくまで、おじいさんは仕事をしていました。寒い、冬のことで、外には、雪がちらちらと降っていました。風にあおられて、そのたびに、さらさらと音をたてて、窓の障子に当たるのがきこえました。 家の内に、ランプの火は、うす暗くともっていました。そして、おじいさんが、槌でわらを叩く音が、さびしいあたりに、おりおりひびいたのであります。 このおじいさんは、たいそう酒が

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酒ぎらい

太宰治

二日つづけて酒を呑んだのである。おとといの晩と、きのうと、二日つづけて酒を呑んで、けさは仕事しなければならぬので早く起きて、台所へ顔を洗いに行き、ふと見ると、一升瓶が四本からになっている。二日で四升呑んだわけである。勿論、私ひとりで四升呑みほしたわけでは無い。おとといの晩はめずらしいお客が三人、この三鷹の陋屋にやって来ることになっていたので、私は、その二三日

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酒のあとさき

坂口安吾

私は日本酒の味はきらひで、ビールの味もきらひだ。けれども飲むのは酔ひたいからで、酔つ払つて不味が無感覚になるまでは、息を殺して、薬のやうに飲み下してゐるのである。私は身体は大きいけれども胃が弱いので、不味を抑へて飲む日本酒や、ビールは必ず吐いて苦しむが、苦しみながら尚のむ。気持よく飲めるのは高級のコニャックとウヰスキーだけだが、今はもう手にはいらず、飲むよし

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酒中日記

国木田独歩

五月三日(明治三十〇年) 「あの男はどうなったかしら」との噂、よく有ることで、四五人集って以前の話が出ると、消えて去くなった者の身の上に、ツイ話が移るものである。 この大河今蔵、恐らく今時分やはり同じように噂せられているかも知れない。「時に大河はどうしたろう」升屋の老人口をきる。 「最早死んだかも知れない」と誰かが気の無い返事を為る。「全くあの男ほど気の毒な

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酒倉

小川未明

甲と乙の二つの国は、隣り合っているところから、よく戦争をいたしました。 あるときの戦争に、甲の国は乙の国に破られて、乙の軍勢は、どしどし国境を越えて、甲の国に入ってきました。甲の大将は、とても正当の力では乙の軍勢を防ぐことができない、そうして降参しなければならないと思いましたから、これはなにか策略を巡らして、乙の兵隊や、大将どもを殺してしまわなければならぬと

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酒友

田中貢太郎

酒友 田中貢太郎 車という男は、貧乏でありながら酒ばかり飲んでいた。そして、夜よる三ばい位の罰杯を飲まさないと寝ることができないというほどであった。だから枕もとには、平生酒を置いてないことがなかった。 ある夜眼が醒めて寝がえりをしてみると、人といっしょに寝ているような気がしたが、しかし、これは蒲団がはげて落ちたからであろうと思って、手をやって摸でてみると、毛

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酒場にて

中原中也

今晩あゝして元気に語り合つてゐる人々も、 実は、元気ではないのです。 近代といふ今は尠くも、 あんな具合な元気さで ゐられる時代ではないのです。 諸君は僕を、「ほがらか」でないといふ。 しかし、そんな定規みたいな「ほがらか」なんぞはおやめなさい。 ほがらかとは、恐らくは、 悲しい時には悲しいだけ 悲しんでられることでせう? されば今晩かなしげに、かうして沈ん

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酒場にて(定稿)

中原中也

今晩あゝして元気に語り合つてゐる人々も、 実は、元気ではないのです。 近代といふ今は尠くも、 あんな具合な元気さで ゐられる時代ではないのです。 諸君は僕を、「ほがらか」でないといふ。 しかし、そんな定規みたいな「ほがらか」なんぞはおやめなさい。 ほがらかとは、恐らくは、 悲しい時には悲しいだけ 悲しんでられることでせう? されば今晩かなしげに、かうして沈ん

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酒場にあつまる ――春のうた――

萩原朔太郎

酒をのんでゐるのはたのしいことだ、 すべての善良な心をもつひとびとのために、 酒場の卓はみがかれてゐる、 酒場の女たちの愛らしく見えることは、 どんなに君たちの心を正直にし、 君たちの良心をはつきりさせるか、 すでにさくらの咲くころとなり、 わがよき心の友等は、多く街頭の酒場にあつまる。 ●図書カード

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酒に就いて

萩原朔太郎

酒といふものが、人身の健康に有害であるか無害であるか、もとより私には醫學上の批判ができない。だが私自身の場合でいへば、たしかに疑ひもなく有益であり、如何なる他の醫藥にもまさつて、私の健康を助けてくれた。私がもし酒を飮まなかつたら、多分おそらく三十歳以前に死んだであらう。青年時代の私は、非常に神經質の人間であり、絶えず病的な幻想や強迫觀念に惱まされてゐた。その

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酒屋のワン公

小川未明

酒屋へきた小僧は、どこかの孤児院からきたのだということでした。それを見ても、彼には、頼るものがなかったのです。 ものをいうのにも、人の顔をじっと見ました。その目つきはやさしそうに見えたけれど、なんとなく、不安な影が宿っていました。 「もしや、自分のいったことが、相手の心を傷めて、しかられるようなことはないかしらん?」と、思ったがためです。 世間の心ある親たち

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酒徒漂泊

佐藤垢石

酒徒漂泊 佐藤垢石 一 昨年の霜月のなかばごろ、私はひさしぶりに碓氷峠を越えて、信濃路の方へ旅したのである。山国の晩秋は、美しかった。 麻生豊、正木不如丘の二氏と共に、いま戸倉温泉の陸軍療養所に、からだの回春を待ちわびている三百人ばかりの傷病兵の慰問を志して、上野駅から朝の準急に乗った。峠のトンネルを抜けて、沓茫とした軽井沢の高原へ出ると、いままで汽車の窓か

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酒渇記

佐藤垢石

酒渇記 佐藤垢石 一 近年、お正月の門松の林のなかに羽織袴をつけた酔っ払いが、海豚が岡へあがったような容でぶっ倒れている風景にあまり接しなくなったのは年始人お行儀のために、まことに結構な話である。また露地の入口に小間物店を開いた跡が絶えて少なくなったのも衛生上甚だ喜ばしい。 それというのは、ご時世で物の値が一帯に高くなり酒ばかり飲んでいたのでは生活向きが立た

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酒盗人

牧野信一

私は、マールの花模様を唐草風に浮彫りにした銀の横笛を吹きずさみながら、 ……………… おゝ これはこれ ノルマンデイの草原から 長蛇船の櫂をそろへて 勇ましく 波を越え また波と闘ひ 月を呪ふ国に到着した ガスコンの後裔 ……………… と歌つた。 節々をきざむ私の指先が、花模様の笛に反射する月の光りのうへに魚となつて躍つてゐた。――明る過ぎる月夜の街道であつ

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ミミズ酒と美女

佐藤垢石

ミミズ酒と美女 佐藤垢石 梅雨の、わが庭に蚯蚓が這いだしてきた。一匹は南に向かい、一匹は西に行く。一体、蚯蚓はどこを目当てに這って行くのであろう。 それはともかく、蚯蚓は釣りにはなくてはならぬ餌である。私は若い頃から釣りを好み、就中鮒釣りやなまず釣りに熱中するから、多年蚯蚓にはご厄介になっている私である。梅雨のころの蚯蚓に幸あれ。 ところで先日、山口栄次と呼

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ちかごろの酒の話

坂口安吾

ちかごろの酒の話 坂口安吾 メチルで死人がでるやうになつたとき大井広介から手紙で、新聞でメチル死といふ記事を見るたびに、私が死んだんぢやないかと思つて読んでゐる。気をつけてくれ、といふことを書いてよこした。そのとき、大丈夫、オレより先にタケリンがやられるだらう。そしたらオレも気をつける。と何気なく書き送つたところ本当に武田麟太郎が仆れてしまつた。こいつはいけ

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(酒は誰でも酔はす)

中原中也

酒は誰でも酔はす だがどんな傑れた詩も 字の読めない人は酔はさない ――だからといつて 酒が詩の上だなんて考へる奴あ 「生活第一芸術第二」なんて言つてろい 自然が美しいといふことは 自然がカンヴァスの上でも美しいといふことかい―― そりや経験を否定したら インタレスチングな詩は出来まいがね ――だが 「それを以てそれを現すべからず」つて言葉を覚えとけえ 科学

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酒の追憶

太宰治

酒の追憶 太宰治 酒の追憶とは言っても、酒が追憶するという意味ではない。酒についての追憶、もしくは、酒についての追憶ならびに、その追憶を中心にしたもろもろの過去の私の生活形態についての追憶、とでもいったような意味なのであるが、それでは、題名として長すぎるし、また、ことさらに奇をてらったキザなもののような感じの題名になることをおそれて、かりに「酒の追憶」として

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