「黄銅時代」創作メモ
宮本百合子
「黄銅時代」創作メモ 宮本百合子 場所 大学の道。 Fuの家。 此の家。 音楽会。 友達のうち。 郊外のトリップ 電車の中。 どこかの別荘。 ――○―― ○吉田さんのところ、○フィティア 自分の部屋、ダニエルの、和田の。ホール、 ○病院、 ○キャムパス。リス、楓、ぬれて横わるパン、インディアン ダンス○図書館(セミナー。ジェネラル。廊下。) ○
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宮本百合子
「黄銅時代」創作メモ 宮本百合子 場所 大学の道。 Fuの家。 此の家。 音楽会。 友達のうち。 郊外のトリップ 電車の中。 どこかの別荘。 ――○―― ○吉田さんのところ、○フィティア 自分の部屋、ダニエルの、和田の。ホール、 ○病院、 ○キャムパス。リス、楓、ぬれて横わるパン、インディアン ダンス○図書館(セミナー。ジェネラル。廊下。) ○
宮本百合子
黄銅時代の為 宮本百合子 ト翁は、人間が結婚を欲するのは、情慾に動かされるからだ、と云って居るのを、彼の日記の中に見る。又、個人を愛するのには盲目に成らなければ愛せない。盲目に成らなければ只神と人類を愛し得るのみだ。――神性を愛するよりほか出来なく成る、とも云って居る。結婚の自然的な結果は生殖である。此は生理的の結果で、人間の内に神が死なない限り、人は只異性
甲賀三郎
秘密の上にも秘密にやった事だったが、新聞記者にかゝっちゃ敵わない、すぐ嗅ぎつけられて終った。 子爵二川重明が、乗鞍岳の飛騨側の頂上近い数百町歩の土地を買占めただけなら兎に角、そこの大雪渓を人夫数十人を使って掘り始めたというのだからニュース・ヴァリュ百パーセントである。 二川家は子爵の肩書が示している通り、大名としては六七万石の小さい方だったが、旧幕時代には裕
島木健作
黎明 島木健作 若い地區委員會の書記の太田健造は、脚の折れ曲つたテーブルの上に心持ち前かゞみになり、速力をもつて書類に何か書き込んでゐた。――街道筋の家並みがとだえがちになり、ひろびろとした田圃の眺めがちやうどそこから展けようとするあたりにその家は建つてゐた。暮れかけて間もない街道をまつすぐに走つて來た自轉車の何臺かがその家の前まで來てとまつた。暗い土間に自
萩原朔太郎
この青くしなへる指をくみ合せ、 夜あけぬ前に祈るなる、 いのちの寂しさきはまりなく、 あたりにむらがる友を求む。 そこにふるへ、 かくれつつうかがひのぞく榎あり、 いのりつつ、一心に幹をけづりしに、 樹樹はつめたく去り行けり。 みなつらなめて逃れゆく、 黎明の林を出づる旅びとら、 その足竝に音はなけれど、 水ながれいでて靴のかかとをうるほせり。 かくばかり我
小川未明
いまでは、いい薬がたくさんにありますけれど、まだ世間が開けなかった、昔は、家伝薬などを用いて病気をなおしたものであります。 この話も、その時分のことで、雪の降る北の国にあったことでした。 おじいさんは、働いて、たくさんのお金をおばあさんに残して、先へこの世の中から去ってしまった。後に残されたおばあさんは、独りさびしく暮らしてゆかなければなりませんでした。 お
宮沢賢治
黒ぶだう 宮沢賢治 仔牛が厭きて頭をぶらぶら振ってゐましたら向ふの丘の上を通りかかった赤狐が風のやうに走って来ました。 「おい、散歩に出ようぢゃないか。僕がこの柵を持ちあげてゐるから早くくぐっておしまひ。」 仔牛は云はれた通りまづ前肢を折って生え出したばかりの角を大事にくぐしそれから後肢をちゞめて首尾よく柵を抜けました。二人は林の方へ行きました。 狐が青ぞら
小川未明
はるか、北の方の国にあった、不思議な話であります。 ある日のこと、その国の男の人たちが氷の上で、なにか忙しそうに働いていました。冬になると、海の上までが一面に氷で張りつめられてしまうのでした。だから、どんなに寒いかということも想像されるでありましょう。 夜になると、地球の北のはてであったから、空までが、頭の上に近く迫って見えて、星の輝きまでが、ほかのところか
槙本楠郎
男の子たちはみんな、体中まつ黒にしたいと思ひました。色のなまつ白い男の子なんかは、この漁師の村ではバカにされました。それに夏休みがすんで九月になると、村の小学校では「黒んぼ会」があるのでした。 「今年は、誰が一等賞になるだらう?」 黒んぼ会は、学校中で一番日に焼けた男の子だけ三人選んで、黒いふんどしの賞品をくれるのでしたが、それには会のマークが入つてゐるので
佐左木俊郎
黒い地帯 佐左木俊郎 一 煉瓦工場からは再び黒煙が流れ出した。煤煙は昼も夜も絶え間なく部落の空を掩包んだ。そして部落中は松埃で真黒に塗潰された。わけても柳、鼠梨、欅などの樹膚は、何れとも見分けがたくなって行った。桐、南瓜、桑などの葉は、黒い天鵞絨のように、粒々のものを一面に畳んだ。 雨が降ると黒い水が流れた。何処の樹木にも黒い雀ばかりだった。太陽は毎日毎日熱
小川未明
昔のことでありました。ある小さな国の女皇に二人のお子さまがありました。姉も妹もともに美しいうえに、りこうでありました。女皇は、もう年をとっていられましたから、お位を姉のほうのお子さまに譲ろうと思っていられました。 そのうち、姉のほうが、目をわずらわれて、すがめになられました。いままで、花のように美しかった顔が急に醜くなってしまいました。すると、女皇は、いまま
沼井鉄太郎
黒岩山は鬼怒川峽谷の川俣温泉を根據地として黒澤を遡れば達せられるだらうといふ事は、當然誰にも豫想されるし、又時間の上から云つても最も便利な順路に違ひないが、實川の谷から取付くといふ事が數年來の私の希望であつた。其れには檜枝岐村を發足地とするの他はないが、其の奧深き里までは日光―川俣温泉―引馬峠―と結び付けるのが捷徑である。 大正九年の十月二十八日午後十一時と
平林初之輔
黒岩涙香の名をきいて、いちばん先に思い出すのは彼が在命中の『万朝報』である。何というタイプか知らないが、平べったい活字で、トップからボトムまで、ぎっしりつめこんだ四頁の新聞によって、当時の私は、政治問題、社会問題に関するほとんどすべての知識と思想とを養われていたのだった。『万朝報』の下す批判は、私には時事問題を判断する尺度となっていた。 ジャーナリストとして
折口信夫
特にこの能で注意しなければならないのは、舞台構造であります。京都の壬生念仏を思はせるやうな舞台で、上下の廊下が橋掛りになつて居り、舞台の正面には春日神社の神殿を控へて居るのであります。即、舞台と神殿との間には屋根がかけられて、全体が内陣のやうな形をもつてゐます。以前は神殿だけが独立して居つたのですが、現今は、全体として完全な室内舞台の形式になつて居ります。奉
田中貢太郎
『黒影集』の序詞 田中貢太郎 伝奇物語に興味を有する私は、折にふれて支那の随筆小説を読んだ。読むと云っても、もともと消閑の具としてであるから、意の赴くままに眼の行くままに読むと云う有様で、巻を追うて通読したと云う物は殆ど無いが、それでも長い時間の間には、かなり読んだ。そんなことで、時とすると怪譚に筆を著けることがあって、既に『怪談』と云う小冊子まで作っている
久生十蘭
黒い手帳 久生十蘭 黒いモロッコ皮の表紙をつけた一冊の手帳が薄命なようすで机の上に載っている。一輪しの水仙がその上に影を落している。一見、変哲もないこの古手帳の中には、ある男の不敵な研究の全過程が書きつけられてある。それはほとんど象徴的ともいえるほどの富を彼にもたらすはずであったが、その男は一昨日舗石を血に染めて窮迫と孤独のうちに一生を終えた。 この手帳を手
小川未明
どこからともなく、爺と子供の二人の乞食が、ある北の方の港の町に入ってきました。 もう、ころは秋の末で、日にまし気候が寒くなって、太陽は南へと遠ざかって、照らす光が弱くなった時分であります。毎日のように渡り鳥は、ほばしらの林のように立った港の空をかすめて、暖かな国のある方へ慕ってゆきました。 爺は破れた帽子をかぶっていました。そして西洋の絵にある年とった牧羊者
中谷宇吉郎
遠い遠い昔のこと、もちろん人間などまだ地球上に現れなかった時代、おそらく数千万年もの大昔に、太平洋の深海の底に、大きい亀裂がはいった。 その亀裂は、現在のハワイ群島の東方に始まり、それからずっと西方に伸びて、ミッドウェイ島を通り、日本の南方近くにまで達した。そしてその亀裂に沿って、海底のずっと下にある熔岩が、ところどころから噴き出してきた。 これらは深海の底
小倉金之助
アメリカ数学史を調べている途中、黒板の来歴という問題に触れたので、少しばかり書き付けて見よう。ただこれは主として数学の面のみからの考察に止まるので、中には大きな誤りを冒しているかも計り難い。各方面の識者の御示教をお待ちする次第である。 わが国で黒板が盛んに使用されるようになったのは、何といっても明治初年に、アメリカ人による教育上の指導からである。明治五年(一
北原白秋
黒檜の沈静なる、花塵をさまりて或は識るを得べきか。 薄明二年有半、我がこの境涯に住して、僅かにこの風懐を遣る。もとより病苦と闘つて敢て之に克たむとするにもあらず、幽暗を恃みて亦之を世に愬へむとにもあらず、ただ煙霞余情の裡、平生の和敬ひとへに我と我が好める道に終始したるのみ。 「黒檜」一巻、秘して寧ろ密かに我といつくしむべく、梓に上して些か我が真実の謬られむこ
甲賀三郎
探偵小説界の怪物江戸川乱歩が出現して満十年、同じく怪物小栗虫太郎が出現した。この満十年という年月はどうも偶然でないような気がする。小栗君が現われた時に、私は江戸川君を誘って、満十年にして新人出で、探偵小説壇によき後継者を得たお祝いをしようと思ったが、つい果さなかった。今でもそれを残念に思っている。 江戸川君の怪物ぶりと小栗君の怪物ぶりとは自ら違う。然し、両君
小栗虫太郎
「黒死館殺人事件」の完成によって、それまで発表した幾つかの短篇は、いずれも、路傍の雑草のごとく、哀われ果敢ないものになってしまった。のみならず、本篇が「新青年」に連載中は、褒められるにも、誹られるにも、悉く最大級の用語を以ってせられた。事実、その渦の中で、私は散々に揉み抜かれたのである。恐らく、日本に探偵小説が出現して以来、かくも私ほど、敵視された作家も、例
小川未明
このごろ毎日のように昼過ぎになると、黒いちょうが庭の花壇に咲いているゆりの花へやってきます。 最初、これに気がついたのは、兄の太郎さんでした。 「大きい、きれいなちょうだな。小鳥ぐらいあるかしらん。弟が見つけたら、きっとつかまえてしまうだろう、今年の夏は、すばらしい昆虫の標本をつくるのだといっていたから。弟の帰らないうちに、はやく逃げていってしまえばいいにな
豊島与志雄
前から分っていた通り、父は五十歳限り砲兵工廠を解職になった。 十二月末の、もう正月にも五日という、風の強い寒い日だった。父はいつになく早く帰ってきた。 「電気はまだか、薄暗くなってるに。」 初めは怒鳴りつけるような、後は泣くような、声の調子だった。が、まだどこか昼の光の残ってる中につけられた、赤っぽい電燈の光で見る父の顔に、私はなお一層びっくりした。父は弁当