Chapter 1 of 6
一月十日
午前運動の為め亀井戸までゆき。やや十二時すぐる頃帰て来ると。妻はあわてて予を迎え。今少し前に巡査がきまして牛舎を見廻りました。虎毛が少し涎をたらしていました故鵞口瘡かも知れぬと申して。男共に鼻をとらして口中をよおく見ました。どうも判然はわからぬけれど念のため獣医を呼んで一応見せるがよかろうと申して。今帰ったばかりです どうしましょうと云う。予はすぐ其の足で牛舎へはいって虎毛を見た。異状は少しもない。老牛で歯が稍鈍くなっているから。はみかえしをやる度自然涎を出すのである。此牛はきょうにかぎらずいつでもはみかえしをやる度に涎を出すのはきまって居るのだ。それと角へかけて結びつけたなわの節が。ちょうど右の眼にさわるようになっていたので涙を流していた。巡査先生之を見て怪んだのである。獣医を呼ぶまでもなしと予が云うたので。家内安心した