Chapter 8 of 13
五、屋外に於ける避難
地震の當初から屋外にゐた者も、周圍の状況によつては必ずしも安全であるとはいはれない。又容易に屋内から逃げ出すことが出來ても、立退き先の方が却つて屋内よりも危險であるかも知れない。石垣、煉瓦塀、煙突などの倒潰物は致命傷を與へる事もあるからである。又家屋に接近してゐては、屋根瓦、壁の崩壞物に打たれることもあるであらう。
石燈籠は餘り強大ならざる地震の場合にも倒れ易く、さうして近くにゐたものを壓死せしめがちである。特に兒童が顛倒した石燈籠のために生命を失つた例は頗る多い。これは兒童の心理作用に基づくものゝようであるから、特に父兄、教師の注意を要する事であらう。元來神社、寺院には石燈籠が多い。さうして其處は多く兒童の集る所である。そこで偶地震でも起ると兒童は逃げ惑ひ、そこらにある立木或は石燈籠にしがみつく。これは恐らくかういふ場合、保護者の膝にしがみつく習慣から斯く導かれるものであらう。それ故餘り大きくない地震、例へば漸く器物を顛倒し土壁を損し粗造な煉瓦煙突を損傷するに止まる程度に於ても、石燈籠の顛倒によつて兒童の壓死者を出すことが珍しくない。此事は教師父兄の注意を促すと共にわが小國民に、向つても直接に戒めて置きたいことである。