Chapter 1 of 33

おねえさま

空には一点の雲もなく、さんさんとかがやく太陽に照らされて、ひろい原っぱからは、ゆらゆらと、かげろうがたちのぼっていました。

その原っぱのまんなかに、十二―三人の小学校五―六年生から、中学一―二年ぐらいの少年たちが集まっていました。その中にたったひとり、女の子がまじっていたのです。女の子といっても、もう高等学校を出た美しいおじょうさんです。えびちゃ色のワンピースを着て、にこにこ笑っています。少年たちの先生にしては、まだ若すぎますし、お友だちにしては、大きすぎるのです。

そのおじょうさんのそばに、少年探偵団の団長の小林君が立っていました。そして、みんなに、なにかしゃべっているのです。

「きょう、団員諸君に、ここへ集まってもらったのは、ぼくのおねえさまを、しょうかいするためだよ。」

そこにいる少年たちは、みんな少年探偵団の団員だったのです。少年たちはぐるっと輪になって、美しいおじょうさんと、小林団長をとりかこみ、好奇心に目をかがやかせながら、団長の話を聞いています。

「おねえさまといっても、ほんとうのおねえさまじゃないよ。明智先生の新しいお弟子なんだよ。つまり、えーと、少女助手だよ。」

そういって、小林君は、ちょっと、顔を赤くして頭をかくまねをしました。

「ぼくは先生の少年助手だろう。だから、マユミさんは少女助手といってもいいだろう? 花崎マユミさんって、いうんだよ。」

すると美しいおじょうさんがニッコリ笑って、みんなに、ちょっと頭をさげてあいさつしました。

「マユミさんは明智先生のめいなんだよ。先生のおくさんのねえさんの子どもなんだよ……。」

マユミさんは、それをひきとって、

「なんだか、いいにくそうね。わたしが説明するわ。明智先生は、わたしのおじさまなのよ。ですから、わたし、小さいときから探偵がすきだったのです。それで、こんど高等学校を卒業したので、大学へはいるのをやめて、先生の助手にしていただいたの。おとうさまやおかあさまも賛成してくださったわ。そういうわけで、わたし、小林君のおねえさまみたいになったの。みなさんもよろしくね。」

「じゃあ、ぼくたちにも、おねえさまだねえ!」

とんきょうな声で、そんなことをさけんだのは、野呂一平君でした。野呂君は小学校六年生ですが、からだの大きさは四年生ぐらいで力も弱く、探偵団でいちばんの、おくびょうものでした。あだ名はノロちゃんといいますが、けっしてノロマではなく、なかなかすばしっこいのです。小林団長をひじょうに尊敬しているので、むりにたのんで団員にしてもらったのです。あいきょうものですから、みんなにもすかれていました。

「ええ、そうよ。みなさんのおねえさまになってもいいわ。」

マユミさんが、そう答えたので、少年たちのあいだに「ワーッ。」という、よろこびの声がおこりました。

「わたしは、探偵のすきなことでは、あなたがたに負けないつもりよ。わたしのおとうさまは花崎俊夫という検事なの。ですから、わたし、いろいろおとうさまからおそわっているし、おとうさまのお友だちの法医学の先生とも仲よしで、法医学のことも、すこしぐらい知っているわ。大きくなったら、女探偵になるつもりよ。おとうさまは、なまいきだとおっしゃるけれど、わたし、そう決心しているの。ですから、みなさん、仲よくしましょうね。そして、わたしも、少年探偵団の客員ぐらいにしていただきたいわ。」

「客員じゃなくって、ぼくらの女王さまだよ。女王さま、ばんざあい!」

ノロちゃんが、また、とんきょうな声をたてました。少年たちも、それにひかれて、「女王さま、ばんざい。」と声をそろえましたが、けっきょくはマユミさんを、少年探偵団の顧問にしようと話がきまりました。つまり、おねえさま顧問というわけです。こんな美しいおねえさまと顧問とが、いっぺんにできたので、少年たちは元気百倍でした。

さんさんとふりそそぐ太陽の光の下で、マユミおねえさまの、ひきあわせがすみました。なんという、たのしい日だったでしょう。みんな、その日のことは、一生わすれられないほどでした。

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