Chapter 1 of 4
〔成瀬君からの依頼〕
諸君、今日は成瀬〔仁蔵〕君より諸君に向って何か一言述べる様にという事でありました。実は私は教育家でない。なかんずく女子教育という事については学んだ事もなければ、またそれほど深く注意をした事もない。それで甚だ迷惑であるからご免を蒙りたいといって再三辞退を申したけれども、是非何か述べる様にというので不肖を顧みず一言述べようと思います。
昨年成瀬君にお目に懸りまして、女子大学を興すというお話を承りまして、初めて女子大学の大切なる事を承りました。一体私は学問というものはない、また教育上の智識も経験も無いに拘わらず、成瀬君の女子大学設置に熱心な賛成を致し、且つご依頼に依て多少知るところの友人、その他に向って成瀬君のためにこの大学に力を尽すように誘導してくれと頼んだ。それについて私は成瀬君の説を聞いて少しく感じが起ったから、その感じの起ったゆえんを一言しようと思う。